フラーレン関連カラム
近年、注目されている化合物であるフラーレンは溶解性や疎水性が一般的な有機化合物とは異なるため、従来からあるカラムでは分析や分取精製がうまくできませんでした。 弊社ではフラーレンの分離に適した固定相を持つカラムの開発を行ってきており、現在3種類のフラーレン専用カラム(Buckyprep, Buckyprep-M, PBB)を発売しております。
3種類のカラムを使い分けることによりC60やC70をはじめ高次フラーレン、金属内包フラーレン、誘導体化フラーレン等の分析や精製が効率良くできます。また、 各カラムを組み合わせることにより新たな異性体の発見につながる可能性があります。また専用カラム以外にも、PYEやNPEがフラーレンの分離に使用できます。 特にNPEはフラーレン専用カラムと分離特性が異なるため誘導体化フラーレンの分離に適しています。
固定相構造と物性
フラーレン関連充填剤の固定相と物性一覧表
充填剤名称 | Buckyprep | Buckyprep-M | PBB | PYE | NPE |
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シリカゲル | 全多孔性球状シリカゲル | ||||
平均粒子径 | 5μm | ||||
平均細孔径 | 約 120Å | ||||
比表面積 | 約 300m2/g | ||||
固定相構造 | |||||
化学結合基 | ピレニルプロピル基 | フェノチアジル基 | ペンタブロモ ベンジル基 |
ピレニルエチル基 | ニトロフェニル エチル基 |
結合形式 | モノメリック | ||||
エンドキャッピング処理 | あり | なし | あり | ||
炭素含有率 | 約17% | 約13% | 約8% | 約18% | 約9% |
特長 | ・フラーレン分離の スタンダード |
・金属内包フラーレン 分離に最適 |
・C60,C70等の 大量分取に最適 |
・フラーレン分離や構造異性体の分離に | ・誘導体化フラーレンの分離に最適 |
上の表の充填剤名称をクリックしていただきますと各製品の紹介ページにリンクしています 。(PYE・NPEへはリンクしていません)
比較例
トルエン中での保持力の比較
フラーレンに対して溶解力の高いトルエンを移動相としたときの各カラムのC60とC70に対する保持の大きさを下図と表1に示しました。
コスモシールのフラーレン専用カラム(Buckyprep, Buckyprep-M, PBB)やPYEはトルエン中においても大きな保持を与え、
C60とC70をきれいに分離しました。一方、アルキル基を固定相とするC18、およびNPEはトルエン中では非常に小さな保持しか与えませんでした。
Buckyprep | Buckyprep-M | PBB |
---|---|---|
PYE | NPE | 5C18-MS-II |
分析条件 | |
---|---|
カラム サイズ |
4.6mmI.D.×250mm |
移動相 | トルエン |
流 速 | 1.0ml/min |
温 度 | 30℃ |
検 出 | UV312nm |
サンプル |
|
表1. トルエン中での保持力の比較 | |||
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カラム | k' C60 | k' C70 | αC70/C60 |
PBB | 2.22 | 5.43 | 2.44 |
Buckyprep | 1.54 | 3.09 | 2.00 |
Buckyprep-M | 1.12 | 1.79 | 1.59 |
PYE | 0.71 | 1.46 | 2.06 |
NPE | 0.07 | 0.09 | 1.40 |
5C18-MS-II | 0.00 | 0.00 | 1.00 |
トルエン中で保持力の大きい利点
表2に各溶媒の C60に対する溶解性と沸点を示しました。トルエンはフラーレンに対する溶解性が高く、また適度な沸点、低価格、腐食性が少ない等の理由によりフラーレンの分離に最も汎用的に使用されます。
表2. 各溶媒のC60に対する溶解性と沸点 | ||
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溶媒 | mg/ml | b.p.( ℃) |
Methanol | 0.001 | 64.5 |
Acetonitrile | 0.018 | 81.8 |
n-Hexane | 0.046 | 68.7 |
Toluene | 3.2 | 111 |
Chlorobenzene※ | 7.0 | 132 |
Carbon Disulfide | 12 | 46.3 |
o-Dichlorobenzene※ | 27 | 180 |
1,2,4-Trichlorobenzene | 21.3 | 213 |
※:R.S.Ruoff,et al.,J.Phy.Chem.,97,3379(1993)
C18のようなアルキル基を固定相にもつカラムは、トルエン中では分離ができませんが、溶解性の低いアセトニトリルをトルエンに混合した移動相を用いると下図のように分析が可能になります。しかし、分取精製の目的でフラーレンのトルエン溶液の注入量を増やすとピークがリーディングをおこし、わずか70l(175g)のサンプル負荷で分離の限界となりました。一方、コスモシールBuckyprepは、トルエン中で保持がありさらに分離が可能であるために、トルエン溶液を注入してもリーディングをおこさず、C18カラムの約35倍である2500l(6.25mg)のサンプル注入が可能になりました。
5C18-MS-II | Buckyprep |
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分析条件 | |||
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カラム サイズ |
4.6mmI.D.×250mm | 温 度 | 30℃ |
移動相 | 5C18-MS-II/トルエン: アセトニトリル=55:45 Buckyprep/トルエン |
検 出 | UV 285nm |
流 速 | 1.0ml/min | サンプル | フラーレントルエン抽出物: 2.5 mg/ml |
溶媒の適用
トルエン以外にフラーレンの分離に良く使用される溶媒と特長
クロロベンゼン | トルエンよりも溶出力が大きくなります。保持が大きい高次フラーレンなどを短時間に溶出させる場合に効果的です。 |
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o-ジクロロベンゼン | クロロベンゼンよりもさらに溶出力が大きくなります。フラーレンの溶解性が非常に高いです。 |
1,2,4-トリクロロベンゼン | 溶出力が最も強い溶媒です。吸着されている高次フラーレンの洗浄に効果的です。また連続して高純度で精製する場合は1回の分取毎に洗浄されることをお勧めします。 (4.6mmI.D.×250mm---約3ml注入洗浄, 20mmI.D.×250mm---約50ml注入洗浄) |
ヘキサン | 溶出力の弱い溶媒です。保持の小さなフラーレンの分離や、時間が掛かっても分離を良くしたい場合に適しています。 |
アセトニトリル | 溶出力の弱い溶媒です。保持の小さなフラーレンの分離や、時間が掛かっても分離を良くしたい場合に適しています。 |
* いずれもHPLC用でない場合はカラムの目詰まりを防ぐために、
ろ過あるいは蒸留してから使用して下さい。
上記以外にも、アルカリ水溶液や強酸溶液以外の溶媒が使用可能です。
(水を含まないピリジンは使用可能です)
ただし、溶媒によっては粘度の高いものがありますので、分析圧力に十分にご注意ください。
Fullerene Chromatogram Indexについて
弊社では、コスモシールを使用したフラーレン関連化合物のHPLC データを皆様からご提供いただき、データ集としてまとめました。
データ集をご入用の場合には、最寄りの弊社営業所・販売取扱店までご連絡ください。また、フラーレン・ナノチューブ学会のご厚意により、
下記のアドレスにデータ集を掲載させていただいております。
フラーレン・ナノチューブ学会のホームページ内
http://www.fullerene-jp.org/jp/main5_link.html
・クロマトindex からご覧ください。