COSMOSIL

⑦ 分析圧上昇時の対処方法

はじめに

分析を繰り返すことにより分析圧力が高くなる場合があります。高圧の状態での使用を続けると、カラム劣化の促進や装置への過負荷による故障の原因になります。ここでは分析圧力が高くなった場合の対処方法を示します。

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【今さら聞けない】HPLCベーシックセミナー 分析圧力上昇のトラブル編

1. 異常箇所の探索

分析圧力が高くなった場合、カラムを含めた流路に目詰まりが起こって、圧力が高くなります。また、装置にも負荷がかかっている場合があるため、まず、目詰まりを起こしている箇所を探します。

HPLC システムの概略図

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移動相を送液しながら HPLC システムの流路の後ろ側から(検出器より)順次、配管を外し、圧力を測定し、異常に圧力がかかっている箇所を探します。通常、装置部分には圧力はほとんどかかりません。 ガードカラムと分析カラムは使用初期の圧力と比較することにより判断します。

2. 装置が高圧のときの対処方法

上記異常箇所の探索に従って原因箇所を特定してください。

ケース 1 配管が高圧
原因 塩の析出やゴミの詰まりの可能性があります。
対処 カラム・検出器を接続しない状態で配管に水を送液してください。配管を逆に接続して洗浄するのも有効です。改善しない場合は配管を交換してください。

※分析圧力上昇とは、直接関係ありませんが、配管が塩の析出やゴミの詰まりで分析圧力上昇の可能性がある場合、移動相貯槽中のサクションフィルターも同様に詰まっている可能性があります。サクションフィルターが詰まるとポンプに負担がかかりますので、水などに浸し、超音波洗浄器で 5 分洗浄してください。
ケース 2 送液ポンプが高圧
原因 ポンプのラインフィルターの汚れが考えられます。
対処 ラインフィルターを取り外して洗浄します。洗浄方法は、ラインフィルターを溶媒に浸して超音波によって洗浄してください。改善しない場合は交換してください。
ケース 3 マニュアルインジェクターが高圧
原因 汚れやゴミの詰まりの可能性があります。
対処

汚れを溶解するような溶媒(メタノールなど)をシリンジで 20 mL 程度注入しインジェクターを洗浄してください。その場合、LOAD と INJECT の両方の流路を洗浄してください。汚れがひどい場合には、インジェクターを分解して超音波で洗浄してください。ゴミのつまりの場合、逆方向からの洗浄が有効です。

3. カラムが高圧のときの対処方法

ケース 1 移動相中に塩が析出している、または、緩衝液使用後に有機溶媒濃度が高い移動相を送液した
原因 塩がカラム内に析出している可能性があります。
対処 析出している塩を溶かすために、10% 程度の有機溶媒(メタノールやアセトニトリルなど)水溶液を用いて通常分析時の半分程度の流速で 30 分程度洗浄してください。改善しない場合は、水 100% で同様に洗浄してください。
予防 緩衝液使用後に有機溶媒濃度が高い移動相を送液する場合は、使用の移動相から緩衝液や塩を抜いた溶媒で洗浄した後に有機溶媒が高い移動相を送液してください。
(例)アセトニトリル / 20 mmol/L りん酸緩衝液(pH 2.5)= 10 / 90 からアセトニトリル / 水 = 90 / 10 に変更する場合、まずアセトニトリル / 水 = 10 / 90 で 15 分程度洗浄した後にアセトニトリル / 水 = 90 / 10 を送液してください。
ケース 2 サンプルが完全に溶解していない、または、ろ過していない
原因 サンプル由来の不溶物によるカラムのフィルターの詰まりの可能性があります。
対処 カラムを逆向きに装着し、分析に使用している移動相を通常分析時の半分程度の流速で 30 分程度カラムを洗浄してください。洗浄しても改善しない場合は、カラムの入り口側のエンドフィッティングの交換によって改善する場合があります。エンドフィッティングの交換は有償にてお請けしています。詳しくはお問い合わせください。
予防 サンプルのろ過を行うことをお薦めします。詳細は COSMOSIL テクニカルノート⑤ をご参照ください。
注意事項 頻繁に逆向きに装着し送液すると、充填状態が乱れ、カラムが劣化する可能性があります。
ケース 3 天然物やタンパク質などカラムに吸着しやすいサンプルを分析している、または、サンプルが移動相に溶けにくい
原因 サンプルが、充填剤に吸着している、もしくはカラム内に析出している可能性があります。
対処

カラムを洗浄してください。カラム別洗浄方法は、「よくあるご質問 Q13.カラムの洗浄方法は?」をご参照ください。

予防

(a)サンプルに適した前処理を行ってください。詳細は COSMOSIL テクニカルノート⑤ をご参照ください。
(b)ガードカラムをご使用ください。詳細は COSMOSIL テクニカルノート⑧ をご参照ください。

注意事項

・カラムを洗浄する際はカラムの出口側を接続せずに通液してください。
・長時間の洗浄はカラムの性能を低下させる恐れがあります。
・シリカゲルベースの充填剤では、pH 7.5 以上のアルカリ性水溶液および pH 1.5 以下の強酸の溶液は使用できません。シリカベースのカラムでは、一般的な使用推奨 pH は 2 ~ 7.5 の範囲になります。推奨 pH 外での使用は可能ですが、劣化を早める恐れがあります。
・洗浄後は、出荷時の溶媒に置換して保管してください。
・ケース 1 ~ 3 の対処をされても改善されない場合、カラムを交換することをお薦めします。

ケース 4 長期間の使用によりカラム圧力が徐々に上昇した
原因 1 長期間の使用によりカラムに吸着物が溜まっている可能性があります。
対処 ケース 3 のようにカラムを洗浄してください。
原因 2

長期間の使用によりカラム内のシリカゲルが割れて微細化し、圧力が上がっている可能性があります。

対処 カラムの再生は不可です。カラムを交換してください。

4. 改善されない場合

ピーク形状などに変化を起こしていない、使用のカラムの耐圧を超えていない場合はそのまま使用することも可能です。しかしながら、装置への負担がかかるため、早期にカラムを交換することをお薦めします。
※掲載内容は予告なく変更になる場合があります。