⑮ COSMOSIL SFC 用カラムの上手な使い方

はじめに

超臨界流体を移動相として使用する超臨界流体クロマトグラフィー(Supercritical Fluid Chromatography, SFC)は、液体クロマトグラフィー(LC)よりも有機溶媒の使用量が極めて少ないこと、分取精製後の溶媒留去が容易であること、LC とは異なる分離挙動を示すことなどから、注目されている分離技術です。 SFC 用カラムは、LC 用カラムとは分析条件の影響が異なります。SFC 用カラムをご使用いただく上で、分析条件の影響を紹介します。

SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)

超臨界流体

物質には固体、液体、気体の状態があります。温度、圧力を加えても液体と気体の区別がつかなくなる終点があり、これを臨界点といい、臨界点の温度(Tc)および圧力(Pc)を超えた状態にある流体を超臨界流体といいます(図 1)。超臨界流体は、気体の粘度と拡散性、液体の溶解性を併せ持ちます(表 1)。比較的簡単な条件(臨界温度 31℃、臨界圧力 7.38 MPa)で臨界流体にすることができる二酸化炭素が SFC の移動相として汎用的に用いられます。

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        図 1:物質の状態図



表 1:気体、液体、超臨界流体の物性値の比較*1
密度(g/cm3粘度(Pa・s)拡散係数(cm2/s)
気体 (0.6 ~ 2.0)×10-3 (1 ~ 3)×10-5 0.1 ~ 0.4
超臨界流体 0.2 ~ 0.9 (1 ~ 9)×10-5 (0.2 ~ 2.0)×10-3
液体 0.6 ~ 1.6 (0.2 ~ 3.0)×10-3 (0.2 ~ 2.0)×10-5

*1 参考文献:村田 誠四郎 (2004) 化学便覧 基礎編 改訂 5 版 丸善株式会社

超臨界流体クロマトグラフと液体クロマトグラフとの主な違い

超臨界流体クロマトグラフの基本的な流路図を図 2 に示します。液体クロマトグラフとの主な違いは、二酸化炭素用の送液ポンプと自動圧力調整弁(BPR)が必要です。

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図 2:超臨界流体クロマトグラフの基本的な流路

分析条件の影響

分析条件の設定方法は LC と異なります。安定した分析をするためには適切な分析条件を設定する必要があります。それぞれの分析条件の影響について評価しました。SFC は順相 HPLC と同様の挙動傾向を示すことが知られています。今回、順相 HPLC で汎用的に使用しているシリカゲルカラムを用いて分析条件の影響を評価しました。弊社ラインアップの SFC 用 COSMOSIL カラムは分析条件の影響は同様の傾向を示します。

移動相の有機溶媒濃度の影響

SFC の移動相は、二酸化炭素にモディファイアとしてメタノールなどの有機溶媒を添加します。有機溶媒濃度を増加すると保持は小さくなる傾向を示します。有機溶媒濃度を増減することで保持時間を調整することができます。ただし、有機溶媒濃度が高い条件下では超臨界状態ではなくなるので圧力の変化や保持挙動に注意が必要です。

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分析条件
カラム COSMOSIL 5SL-Ⅱ,
4.6 mmI.D.-250 mm
温 度 40℃
移動相

A:CO2
B:Methanol
B conc. **%

検 出 UV 254 nm

サンプル

  • Cinnamyl Alcohol
  • p-Nitrobenzyl Alcohol
  • Caffeine
流 速 3.0 mL/min
BPR 10 MPa

移動相の溶媒種の影響

モディファイアは汎用的にメタノール、エタノール、アセトニトリルなどを使用します。モディファイアの有機溶媒はサンプルの移動相への溶解性やカラムの特性を考慮し選択してください。モディファイアとして水を使用することは推奨していません。

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分析条件
カラム COSMOSIL 5SL-Ⅱ,
4.6 mmI.D.-250 mm
温 度 40℃
移動相

A:CO2
B:**
B conc. 10%

検 出 UV 254 nm

サンプル

  1. p-Xylene
  2. Cinnamyl Alcohol
  3. p-Nitrobenzyl Alcohol
  4. Caffeine
流 速 3.0 mL/min
BPR 10 MPa

移動相の添加剤の影響

解離性化合物を分析される場合、モディファイアに添加剤を加えないと吸着やテーリングが起こることがあります。添加剤としてぎ酸や酢酸アンモニウムが汎用的に使用されます。

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分析条件
カラム COSMOSIL 5SL-Ⅱ,
4.6 mmI.D.-250 mm
温 度 40℃
移動相

A:CO2
B:**
B conc. 10%

検 出 UV 254 nm

サンプル

  • 4-Hydroxymethylbenzoic Acid

C-TN-16-p3-tenkazainoeikyou-kouzousiki.png

流 速 3.0 mL/min
BPR 10 MPa

流速の影響

内径 4.6 mm カラムの流速は、3 mL/min を推奨します。流速を速くすると UV の検出感度は低下します。

C-TN-16-p3-ryuusoku-eikyou.png
分析条件
カラム COSMOSIL 5SL-Ⅱ,
4.6 mmI.D.-250 mm
温 度 40℃
移動相

A:CO2
B:Methanol
B conc. 10%

検 出 UV 254 nm

サンプル

  • Cinnamyl Alcohol
  • p-Nitrobenzyl Alcohol
  • Caffeine
流 速 ** mL/min
BPR 10 MPa

BPR(Back Pressure Regulator)の影響

装置内を超臨界状態に保つため、検出器の OUT 側に BPR(Back Pressure Regulator)を接続します。BPR の設定圧力を変えると保持時間は変化します。安定した分析をするために BPR は一定条件に設定することが必要です。通常は 10 MPa に設定してください。

C-TN-16-p3-BPR-eikyou.png
分析条件
カラム COSMOSIL 5SL-Ⅱ,
4.6 mmI.D.-250 mm
温 度 40℃
移動相

A:CO2
B:Methanol
B conc. 10%

検 出 UV 254 nm

サンプル

  • Cinnamyl Alcohol
  • p-Nitrobenzyl Alcohol
  • Caffeine
流 速 3.0 mL/min
BPR ** MPa

カラム温度の影響

カラム温度が高いと保持時間が大きくなる傾向を示します。理論段数(N)はカラム温度が高いとやや高くなります。温度が低くなると超臨界状態を保つことが難しくなるので、通常は 40℃以上に設定してください。

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分析条件
カラム COSMOSIL 5SL-Ⅱ,
4.6 mmI.D.-250 mm
温 度 **
移動相

A:CO2
B:Methanol
B conc. 10%

検 出 UV 254 nm

サンプル

  • Cinnamyl Alcohol
  • p-Nitrobenzyl Alcohol
  • Caffeine
流 速 3.0 mL/min
BPR 10 MPa

サンプル負荷量の影響

サンプルの移動相への溶解性が低い場合、サンプル負荷量が増加するとピークはリーディングする傾向があります。有機溶媒濃度や有機溶媒の種類を変更し、移動相へのサンプル溶解性を高めることでピーク形状を改善することができます。

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分析条件
カラム COSMOSIL 5SL-Ⅱ,
4.6 mmI.D.-250 mm
温 度 40℃
移動相

A:CO2
B:Ethanol
B conc. **%

検 出 UV 254 nm

サンプル

  • 1,4-Benzenedimethanol(** mg/mL)

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流 速 3.0 mL/min
BPR 10 MPa 注入量 5.0 μL

COSMOSIL シリーズを SFC 用として提供可能

COSMOSIL シリーズでは、さまざまな固定相構造をもつカラムをラインアップしています。各種 HPLC 用充填剤を SFC に対応したステンレス管に充填して提供します。 今回、評価に使用したコスモシール 5SL-Ⅱも提供可能ですので、ご入り用の際はお問い合わせください。

※記載の内容は、'17 年 7 月現在の情報に基づいております。