COSMOSIL Application Noteイヌリンの分析

オリゴ糖は逆相モードの C₁₈（ODS）カラムでは保持がないため、糖専用カラムで分析されてきました。今回は、糖専用カラムであるコスモシール Sugar-D の他にも、逆相モードのカラムである PBr（疎水性相互作用に加えて分散力が働くためユニークな分離を示す）を用いて、オリゴ糖であるイヌリンを分析することができましたので紹介します。

はじめに

イヌリンについて

イヌリン（G-F_n）は、グルコース（G）に複数のフルクトース（F）が結合したオリゴ糖～多糖です。チコリーの根やキクイモの塊茎などに多く含まれており、難消化性の水溶性食物繊維として知られています。最近、このイヌリンが腸内細菌のえさとなる短鎖脂肪酸を増やし、腸のぜん動運動を促進するとして、機能性表示食品（イヌリン含有ウーロン茶）⁽¹⁾が販売されるようになりました。文献にも、イヌリンが排便回数や排便量を増加させることが報告されています^{(2), (3)}。

(1) 機能性表示食品:届出番号 C205
(2) Kleessen B. et al. The American Journal of Clinical Nutrition 65(5), 1397-1402(1997).
(3) Castiglia-Delavaud C. et al. British Journal of Nutrition 80(4), 343-352(1998).

サンプル調製

イヌリン標準品

イヌリン標準品を秤量する。
Milli-Q^® 水で 10 mg/mL になるように溶解する。

Milli-Q^® は Merck KGaA の登録商標です。

イヌリン含有ウーロン茶

イヌリン含有ウーロン茶 400 µL をとり、コスモスピンフィルターH（孔径 0.45 µm）（#06540-34）で遠心ろ過する。
遠心ろ過した液をそのままサンプルとする。

分析例

糖専用カラムでの分析

分析条件
カラム	COSMOSIL Sugar-D, 4.6 mmI.D.-250 mm	検　出	RI（セル温度：40℃）
移動相	アセトニトリル / 水 = 60 / 40	サンプル	イヌリン標準品（10 mg/mL）
流　速	1.0 mL/min	注入量	10 µL
温　度	30℃

糖専用カラムである Sugar-D を用いて、イヌリン（G-F_n）の分離が達成できました。鎖長の短いイヌリンである 1-ケストース（G-F-F）およびニストース（G-F-F-F）の溶出時間から、ピークは糖鎖の長さで分離したと考えられます。

逆相モードでの分析

分析条件
カラム	COSMOSIL **, 4.6 mmI.D.-250 mm	検　出	RI（セル温度：40℃）
移動相	メタノール / 水 = 15 / 85	サンプル	イヌリン標準品（10 mg/mL）
流　速	1.0 mL/min	注入量	10 µL
温　度	30℃

ODS カラムである 5C₁₈-PAQ ではイヌリンの保持がありませんでしたが、PBr では疎水性相互作用に加えて分散力による分離がはたらき、イヌリンを鎖長別に分離できました。

イヌリン含有ウーロン茶の逆相分析

分析条件
カラム	COSMOSIL PBr, 4.6 mmI.D.-250 mm	検　出	RI（セル温度：40℃）
移動相	メタノール / 水 = 15 / 85	サンプル	イヌリン含有ウーロン茶（イヌリン 14.6 mg/mL）
流　速	1.0 mL/min	注入量	10 µL
温　度	30℃

イヌリン含有ウーロン茶（イヌリン 7.3 g/500 mL 含有）を分析したところ、標準品と同様な分離パターンのピークが得られました。

分析に用いた製品

分類	用途	製品名	毒劇物	規格	製品番号	容量
カラム	分析	コスモシール Sugar-D パックドカラム 4.6 mmI.D.×250 mm	－	SP （高速液体クロマトグラフ用）	05397-51	1 pkg
		コスモシール PBr パックドカラム 4.6 mmI.D.×250 mm	－		12395-51	1 pkg
		コスモシール 5C₁₈-PAQ パックドカラム 4.6 mmI.D.×250 mm	－		02485-81	1 pkg
試薬	移動相	アセトニトリル	劇		00430-41	1 L
		蒸留水	－		14029-91	1 L
		メタノール	劇		21929-81	1 L
前処理	サンプルろ過	コスモスピンフィルターH（0.45 µm）	－	－	06540-34	100 pkg

※記載の内容は、'19 年 1 月現在の情報に基づいております。