COSMOSIL Application Note第十七改正日本薬局方第一追補に基づくグリチルリチン酸の分析
日本薬局方が改正され、グリチルリチン酸の分析方法が変更されました。第十七局および第十七局第一追補の新しい条件でグリチルリチン酸を分析し、コスモシールカラムがグリチルリチン酸の分析に適合しましたので紹介します。
はじめに
グリチルリチン酸
グリチルリチン酸は別名グリチルリチンという化合物で、カンゾウの根などに含まれます。日本薬局方では、カンゾウおよびカンゾウ末、それにカンゾウが含まれるさまざまなエキス製剤(末尾の表参照)でグリチルリチン酸の定量を行います。 今回は、グリチルリチン酸を含む製剤の定量法に基づいて分析を行いました。定量法には 5 種類の分析(下表参照)があり、このうち(a)、(b)、(c)について分析を行いました。
表. グリチルリチン酸の定量分析の種類
試験 | 分析 | カラム適合評価基準 |
---|---|---|
(a) | システムの再現性の確認 | 6 回繰り返して試験し、グリチルリチン酸のピーク面積の相対標準偏差が 1.5% 以下 |
(b) |
システムの性能 |
グリチルリチン酸に対する相対保持時間約 0.9 のピークとグリチルリチン酸の分離度が 1.5 以上 |
(c) |
システムの性能 |
グリチルリチン酸と(E)-シンナムアルデヒドの分離度が 1.5 以上 |
(d) |
システムの性能 |
グリチルリチン酸のピーク以外に二つのピークを認め、グリチルリチン酸とそれぞれのピークの分離度が 1.5 以上 |
(e) |
システムの性能 |
グリチルリチン酸とバイカレインの分離度が 1.5 以上 |
サンプル調製
グリチルリチン酸標準溶液
- グリチルリチン酸約 10 mg を秤量する。
- 薄めたメタノール(1→2)を加えて溶解し、 全量を 100 mL にする。(0.1 mg/mL 溶液)
グリチルリチン酸一アンモニウム溶液
- グリチルリチン酸一アンモニウム 5 mg を秤量する。
- 希エタノール[エタノール(95):水=1:1(vol:vol)]20 mL を 加え、溶解する。(0.25 mg/mL 溶液)
シンナムアルデヒド添加グリチルリチン酸標準溶液
- (E)-シンナムアルデヒド 約 1 mg を秤量する。
- メタノール 50 mL を加え、溶解する。(0.02 mg/mL 溶液)
- この液 2 mL にグリチルリチン酸標準溶液(0.1 mg/mL)2 mL を加えて混合する。(グリチルリチン酸 0.05 mg/mL、(E)-シンナムアルデヒド 0.01 mg/mL)
移動相の作製方法
50 mM-酢酸アンモニウム(アセトニトリル / 水 / 酢酸 = 28 / 72 / 0.5)
酢酸アンモニウム 3.85 g を水 720 mL に溶かし、酢酸(100)5 mL およびアセトニトリル 280 mL を加える。
試験(a)
●システムの再現性の確認(n=6)
カラム | 5C18-MS-Ⅱ | 5C18-AR-Ⅱ | 5C18-PAQ |
---|---|---|---|
流速 | 1 mL/min | 0.8 mL/min | 1 mL/min |
RSD |
0.69% |
0.89% | 0.62% |
クロマト グラム |
|||
ピーク |
1: グリチルリチン酸 |
分析条件 | |||
---|---|---|---|
カラム | COSMOSIL 5C18シリーズ, 4.6 mmI.D.-150 mm | 検 出 | UV 254 nm |
移動相 |
50 mM-酢酸アンモニウム(アセトニトリル / 水 / 酢酸 = 28 / 72 / 0.5) |
サンプル | グリチルリチン酸標準溶液(0.1 mg/mL) |
温 度 | 40℃ | 注入量 | 10 µL |
6 回繰り返して注入し、グリチルリチン酸のピーク面積の相対標準偏差(RSD)は、どのカラムにおいても基準である 1.5% を下回っていました。→ 適合
試験(b)
●システムの性能:グリチルリチン酸一アンモニウムに含まれる不純物とグリチルリチン酸の分離
カラム | 5C18-MS-Ⅱ | 5C18-AR-Ⅱ | 5C18-PAQ |
---|---|---|---|
流速 | 1 mL/min | 0.8 mL/min | 1 mL/min |
Rs(2/1) | 1.9 | 1.9 | 2.15 |
クロマト グラム |
|||
ピーク |
1: 不純物(グリチルリチン酸に対する相対保持時間 0.9) |
分析条件 | |||
---|---|---|---|
カラム | COSMOSIL 5C18シリーズ, 4.6 mmI.D.-150 mm | 検 出 | UV 254 nm |
移動相 |
50 mM-酢酸アンモニウム(アセトニトリル / 水 / 酢酸 = 28 / 72 / 0.5) |
サンプル | グリチルリチン酸一アンモニウム溶液(0.25 mg/mL) |
温 度 | 40℃ | 注入量 | 10 µL |
ピーク 1 とピーク 2 の分離度(Rs)は、どれも基準である 1.5 を上回っていました。→ 適合
試験(c)
●システムの性能:(E)-シンナムアルデヒドとグリチルリチン酸の分離
カラム | 5C18-MS-Ⅱ | 5C18-AR-Ⅱ | 5C18-PAQ |
---|---|---|---|
流速 | 1 mL/min | 0.8 mL/min | 1 mL/min |
Rs(2/1) | 3.58 | 3.52 |
9.69 |
クロマト グラム |
|||
ピーク |
1:(E)-シンナムアルデヒド |
分析条件 | |||
---|---|---|---|
カラム | COSMOSIL 5C18シリーズ, 4.6 mmI.D.-150 mm | 検 出 | UV 254 nm |
移動相 |
50 mM-酢酸アンモニウム(アセトニトリル / 水 / 酢酸 = 28 / 72 / 0.5) |
サンプル |
(E)-シンナムアルデヒド添加グリチルリチン酸標準溶液 |
温 度 | 40℃ | 注入量 | 10 µL |
ピーク 1 とピーク 2 の分離度(Rs)は、どれも基準である 1.5 を上回っていました。→ 適合
試験(a)、(b)、(c)について
カンゾウを含む生薬製剤で、第十七局および第十七局第一追補で改訂になったもの
日本薬局方 | 製剤名 | 試験名 | 試験法 |
---|---|---|---|
第十七局 | カンゾウ | 定量法 | (a), (b) |
カンゾウ末 | 定量法 | (a), (b) | |
第十七局第一追補 | 乙字湯エキス | 定量法(3) | (a), (b) |
葛根湯エキス | 定量法(3)(i) | (a), (b), (c) | |
定量法(3)(ii) | (a), (b) | ||
葛根湯加川芎辛夷エキス | 定量法(3)(i) | (a), (b), (c) | |
定量法(3)(ii) | (a), (b) | ||
加味帰脾湯エキス | 定量法(3) | (a), (b) | |
加味逍遥散エキス | 定量法(3) | (a), (b) | |
カンゾウエキス | 定量法 | (a), (b) | |
カンゾウ粗エキス | 定量法 | (a), (b) | |
柴胡桂枝湯エキス | 定量法(4)(i) | (a), (b), (d) | |
定量法(4)(ii) | (a), (b) | ||
柴朴湯エキス | 定量法(3)(i) | (a), (b), (e) | |
定量法(3)(ii) | (a), (b) | ||
柴苓湯エキス | 定量法(3)(i) | (a), (b), (d) | |
定量法(3)(ii) | (a), (b) | ||
芍薬甘草湯エキス | 定量法(2) | (a), (b) | |
十全大補湯エキス | 定量法(3)(i) | (a), (b), (c) | |
定量法(3)(ii) | (a), (b) | ||
小柴胡湯エキス | 定量法(3)(i) | (a), (b), (e) | |
定量法(3)(ii) | (a), (b) | ||
小青竜湯エキス | 定量法(3)(i) | (a), (b), (c) | |
定量法(3)(ii) | (a), (b) | ||
大黄甘草湯エキス | 定量法(2) | (a), (b) | |
釣藤散エキス | 定量法(2) | (a), (b) | |
桃核承気湯エキス | 定量法(5) | (a), (b) | |
麦門冬湯エキス | 定量法(2) | (a), (b) | |
半夏瀉心湯エキス | 定量法(2)(i) | (a), (b), (e) | |
定量法(2)(ii) | (a), (b) | ||
防已黄耆湯エキス | 定量法(2) | (a), (b) | |
防風通聖散エキス | 定量法(4) | (a), (b) | |
補中益気湯エキス | 定量法(3) | (a), (b) | |
麻黄湯エキス | 定量法(3)(i) | (a), (b), (c) | |
定量法(3)(ii) | (a), (b) | ||
抑肝散エキス | 定量法(3) | (a), (b) | |
六君子湯エキス | 定量法(3) | (a), (b) | |
苓桂朮甘湯エキス | 定量法(2)(i) | (a), (b), (c) | |
定量法(2)(ii) | (a), (b) |