Arg-SEC Mobile Phase シリーズTGF-β スーパーファミリータンパク質の分析
水系サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography, SEC)においてタンパク質を分析するとき、タンパク質が充填剤に吸着・保持されることで、正確な分析ができないことがあります。
TGF-β スーパーファミリーに分類されるタンパク質は、カラムに保持されやすい性質です。今回、Arg-SEC Mobile Phase シリーズを移動相に用いて、TGF-β スーパーファミリーに属する 2 種類のタンパク質を水系 SEC で分析しました。
はじめに
Arg-SEC Mobile Phase シリーズとは
Arg-SEC Mobile Phase シリーズは、水系 SEC での非特異的な保持や吸着を抑制するために開発された、プレミックスタイプの移動相です。抑制効果の異なる 3 種類をラインアップしています。
Activin A の分析
Activin A は、ES 細胞や iPS 細胞の培養に用いられるタンパク質です。その用途から、なるべく純度の高いものの使用が望ましいと考えられています。
分析条件 | |||
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カラム | TSKgel G3000SWXL, 7.8 mmI.D.-300 mm |
検 出 | UV 280 nm |
移動相 |
** |
サンプル |
Activin A (0.1 mg/mL) |
流 速 | 1.0 mL/min | 注入量 | 10 µL |
温 度 | 30℃ |
* Phosphate Buffer (pH 6.8)
0.1 mol/L Sodium Dihydrogen Phosphate, 0.2 mol/L Sodium Chloride, pH 6.8 with Sodium Hydroxide
TSKgel® は東ソ-株式会社の登録商標です。
結果と考察
りん酸緩衝液(pH 6.8)ではサンプルが浸透限界付近にまとまって溶出し、Activin A は分離しませんでした。移動相の溶出力が強くなるにつれてサンプルと充填剤との相互作用がなくなり、Activin A のピークの溶出が早くなりました。Arg-SEC Mobile Phase(Strong)では、10 分付近に Activin A のピークが溶出し、最も良い分離を示しました。 Activin A は、4 種類の移動相において Arg-SEC Mobile Phase(Strong)での分析が最も適していることがわかりました。
basic-FGF の分析
basic-FGF(b-FGF)は塩基性であるため、弱酸性であるシリカゲル表面に保持されやすいタンパク質です。
分析条件 | |||
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カラム | COSMOSIL 5Diol-300-II, 7.5 mmI.D.-300 mm |
検 出 | UV 230 nm |
移動相 |
** |
サンプル |
b-FGF (0.3 mg/mL) |
流 速 | 1.0 mL/min | 注入量 | 20 µL |
温 度 | 30℃ |
* Phosphate Buffer (pH 6.8)
0.1 mol/L Sodium Dihydrogen Phosphate, 0.2 mol/L Sodium Chloride, pH 6.8 with Sodium Hydroxide
結果と考察
りん酸緩衝液(pH 6.8)では充填剤にタンパク質が保持されてしまい、サンプルが浸透限界付近にまとまって溶出し、b-FGF のピークは分離しませんでした。Arg-SEC Mobile Phase(Strong)では、排除限界を過ぎた後の 7 分付近から 10 分付近にわたってサンプルの溶出が続きました。移動相の溶出力が強いため、充填剤に保持されずに溶出したと考えられます。
b-FGF は、りん酸緩衝液(pH 6.8)よりも Arg-SEC Mobile Phase(Strong)での分析が適していることがわかりました。
分析に用いた製品
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