COSMOSIL PBr 抗老化作用が期待されるニコチンアミド代謝物と TND1128 の一斉分析
老化防止やがんの抑制に効果があるとされるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を含むニコチンアミド代謝物と、TND1128 を含む 5-デアザフラビン類をコスモシール PBr カラムで一斉分析できましたので紹介します。
はじめに
TND1128 について
5-デアザフラビン誘導体である 10-エチル-3-メチル-5-デアザフラビン(TND1128)は、NAD や FAD のように酸化還元能を示すフラビン類縁体の一つです。TND1128 は、ニコチンアミド代謝物と同様に、ミトコンドリアやサーチュイン遺伝子の活性化に関与していることが報告されており、同成分を含むサプリメントも複数販売されています。 5-デアザフラビンには複数の類縁体(NSC106042 など)が存在しますが、中でも TND1128 は高い酸化還元能を持つことから、ニコチンアミド代謝物よりも高い抗老化作用が期待されています。ニコチンアミド代謝物に加えて、TND1128 も同時に分析することができれば、抗老化に関与する各成分の体内動態をモニタリングすることなどが可能になると考えられます。
(a)サーチュイン活性化の概要図 (b)2 種類の 5-デアザフラビン類の構造式
弊社ではこれまでに、コスモシール PBr カラムを用いることで、11 種類のニコチンアミド代謝物を分離することに成功しています1,2)。そこで、これまでの分析条件をもとに、ニコチンアミド代謝物と 5-デアザフラビン類の一斉分析の最適化を試みました。
参考文献1) Ozaki M, Shimotsuma M, Hirose T. Separation of nicotinamide metabolites using a PBr column packed with pentabromobenzyl group modified silica gel. Anal. Biochem. 2022;655:114837.
https://doi.org/10.1016/j.ab.2022.114837
2) Ozaki M, Shimotsuma M, Hirose T. Separation of highly hydrophilic nicotinamide metabolites using a COSMOSIL PBr column. MethodsX. 2023;10:102061.(オープンアクセス)
https://doi.org/10.1016/j.mex.2023.102061
また、1)および 2)の解説は以下をご参照ください。
https://www.nacalai.co.jp/cosmosil/TN-Data/TN-25.html
C18 カラムと PBr カラムを用いたニコチンアミド代謝物と 5-デアザフラビン類の一斉分析
Condition | |||
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Column | COSMOSIL 3C18-AR-Ⅱ, 3.0 mm I.D. × 150 mm COSMOSIL 3PBr, 3.0 mm I.D. × 150 mm |
Sample |
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Mobile phase |
A; 20 mmol/L Ammonium Formate |
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Flow rate | 0.4 mL/min | ||
Tempera ture |
40℃ | ||
Detection | UV 260 nm | Inj. Vol. | 1 µL |
コスモシール PBr カラムを用いることで、親水性が高い 11 種類のニコチンアミド代謝物と 2 種類の 5-デアザフラビン類を、簡単なグラジエント条件で一斉分離することができました。また、移動相にはギ酸アンモニウムを使用しているため、LC-MS の分析にも適用可能です。
PBr カラムを用いた NMN と 5-デアザフラビン類の検量線
Condition | ||||
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Column | COSMOSIL 3PBr, 3.0 mm I.D. × 150 mm | Detection | UV 260 nm | |
Mobile phase |
A; 20 mmol/L Ammonium Formate |
Sample |
※NMN は滅菌水、TND1128 は 80%エタノール、NSC106042 は 20 mM水酸化ナトリウム水溶液に溶解しています。 |
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Flow rate | 0.4 mL/min | |||
Tempera ture |
40℃ | Inj. Vol. | 1 µL |
濃度の異なる NMN と 5-デアザフラビン類を分析したところ、直線的な検量線を作成することができました。
市販サプリメント中の NMN および TND1128 の定量分析
サプリメントの前処理
NMN と TND1128 はそれぞれ溶解させる溶媒が異なるため、分析対象ごとにサンプルを調製する必要があります。
① サンプルを 10 mg 秤量し、滅菌水または 80% エタノールを 10 mL 添加し、5 分超音波処理を行います。
NMNは滅菌水に、TND1128 は 80%エタノールに溶解されます*。
② 12,000 × g で 10 分遠心分離し、得られた上清 300 µL を 5,000 × g で 10 分遠心ろ過します。
③ ろ液 200 µL を回収し、HPLC 分析を行います。
*NSC106042 を分析する場合は、20 mM 水酸化ナトリウム水溶液で溶解してください。
分析結果
前述の方法で前処理した 2 種類のサプリメントを用いて、NMN と TND1128 の定量分析を行いました。
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Condition | |||
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Column | COSMOSIL 3PBr, 3.0 mm I.D. × 150 mm | Tempera ture |
40℃ |
Mobile phase |
A; 20 mmol/L Ammonium Formate |
Detection | UV 260 nm |
Sample |
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Flow rate | 0.4 mL/min | Inj. Vol. | 1 µL |
HPLC 分析により得られたピーク面積と検量線の値から、各サプリメントに含まれる成分の含有量を算出した結果、メーカー記載の成分含量とほぼ一致することを確認しました。