研究者の使用例などCOSMOSIL HILIC アシル基の結合位置の異なるサポニン成分の分析および分取
データご提供:近畿大学 薬学総合研究所 食品薬学研究室 森川 敏生 准教授
クロマトグラフィーで汎用されている C18 カラムは、疎水性に差がないような糖置換体や糖の結合位置が異なる化合物に対して分離が不十分な場合があります。このような化合物の中で親水性基に差があるような化合物に対して親水性相互作用を有するコスモシール HILIC を用いることにより分離が改善する場合があります。今回、アシル基の結合位置が異なる配糖体の分析データをご提供いただきましたので紹介します。
(1)緒論
キク科(Asteraceae)植物デイジー(Bellis perennis)は西ヨーロッパ原産の多年生草本で、その花期が長いことから和名をヒナギク(雛菊)、チョウメイギク(長命菊)およびエンメイギク(延命菊)などと称されます。日本ではおもに園芸品種として親しまれていますが、西欧諸国においては、古くからその開花時の全草や根部を打撲傷、出血、筋肉痛および皮膚病やリウマチの治療に用いられているとともに、その若葉や蕾、花弁などをサラダに加えて生食するなど、食用としても供されています。また、デイジーの花部であるデイジーフラワーはハーブティーなどにも利用され、高度に酸化されたアグリコン部(非糖部)を有するビスデスモシド型トリテルペンサポニン類が含有成分として報告されています。とりわけ、アシル基の有無や種類、あるいは結合位置の違いなど、その化学構造が微妙に異なるサポニン類が多数報告されています。
(2)アシル基の結合位置の異なるサポニン成分の分析
(3)コスモシール HILIC による分取精製
内径 20 mm の分取カラムを用いて、それぞれのサポニンを精製しました。
結果、コスモシール HILIC においてセミ分取サイズのカラムにおいても再現し、それぞれのサポニンが単離することができました。
(4)考察
C18 カラムで分離できなかったアシル基の結合位置のみが異なるサポニン(perennisaponin J および K)の分離について、コスモシール HILIC を用いて検討したところ極めて良好な分離ができました。この良好な分離はセミ分取サイズのカラムにおいても再現し、それぞれのサポニンが単離することができ、NMR などによる構造解析および各種フィジカルデータ測定に必要なサンプル量を確保することができました。