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⑤ HPLC 用サンプルの前処理

サンプルに分析妨害物質が含まれる場合やサンプル濃度が低い場合には、適当な前処理を施してから HPLC 分析を行う必要があります。前処理を行うことによって、夾雑物の除去による分析信頼性の向上、カラムの保護、感度の向上などが期待できます。前処理にはサンプルごとに適した方法があるため、個々に検討する必要があります。ここでは、一般的な前処理法について紹介します。

1. ろ過

サンプルをろ過することにより微粒子、沈殿物、コロイド粒子などを除去します。カラムへの汚染を最小限にとどめるため、カラムの寿命を延ばすことができます。また、安定的なデータが取得できます。以下に弊社でよく使用される 2 種類の前処理フィルターについて紹介します。

項目シリンジフィルター遠心式フィルターユニット
使用法 シリンジに装着 遠心分離機を利用
種類 主に PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)水系 / 溶媒系、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)水系 / 溶媒系、 PES(ポリエーテルスルホン)水系、 ナイロン 水系 / 溶媒系。その他各メーカーにより多種あり。
孔径 主に 0.2 µm、0.45 µm。その他各メーカーにより多種あり。
別途必要 シリンジ・ろ液回収瓶 遠心分離機
弊社製品
製品名 コスモナイスフィルター コスモスピンフィルター
製品形状 シリンジフィルター コスモナイスフィルター 遠心式フィルターユニットコスモスピンフィルター
種類

PTFE(W・水系)、PTFE(S・溶媒系)

H-PTFE(水系 / 溶媒系)

孔径 0.45 µm  0.2 µm・0.45 µm

コスモナイスフィルター

製品イメージ写真

4mm
4 mm
13mm
13 mm

使用方法

  1. シリンジなどでサンプル溶液を吸引します。
  2. シリンジにコスモナイスフィルターを装着します。
  3. シリンジのプランジャーを押し、サンプルをろ過します。
    ※不溶物が多い場合、プランジャーを押すには強い力が必要です。
  4. ろ液を HPLC サンプルとします。
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コスモスピンフィルター

製品構成

  • サンプルバイアル
  • サンプルリザーバー

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使用方法

  1. サンプルリザーバーをサンプルバイアルにセットします。
  2. シリンジなどでサンプル溶液をサンプルリザーバーに入れます。
  3. キャップをした後、遠心分離します。
  4. 不純物が除かれて、ろ液がサンプルバイアルにたまります。
  5. ろ液を HPLC サンプルとします。
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2. 除タンパク(タンパク質変性沈殿法)

血液中の薬物を分析する場合などはサンプル中にタンパク質が共存することが多く、そのまま HPLC 分析を行うとタンパク質がカラムに吸着しカラムの劣化を早めることになります。このため、サンプル中に共存するタンパク質を除くことが必要になります。

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3. 限外ろ過

限外ろ過は、限外ろ過膜の細孔径よりも大きな分子と、小さな分子を分離する方法です。血清や血漿などの高濃度タンパク質溶液からの除タンパクや、尿などの希薄タンパク質溶液からのタンパク質の濃縮、または脱塩などに利用されます。

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4. 溶媒抽出法

疎水性の高い薬物に適用される方法で、サンプルに緩衝液を加えて適当な pH に調整し、エーテル・クロロホルムなどの有機溶媒で目的物質を抽出します。この方法は濃縮が容易なため感度を高めることが可能ですが、目的物質がタンパク質と結合している場合には抽出できないことがあります。

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*3 コスモナイスフィルターの使用方法については、「1. ろ過 コスモナイスフィルター」を参照ください。

5. イオン交換

溶媒抽出では乳化したりして水層と有機溶媒層の分離が行えない場合などには、イオン交換樹脂(イオン交換体)を用いた前処理が有効です。 ただし樹脂の交換容量とサンプル濃度の関係ならびに樹脂の吸着性などの問題をあらかじめ予備実験で確認しておくことが必要になります。 例えば、目的化合物が負に強く電荷している場合 DEAE セルロース樹脂などの陰イオン交換樹脂に強く吸着します。 このため、結合力の弱い他の夾雑物を洗い流した後、緩衝液の塩濃度を上げる、または pH を調整して溶出させることで目的化合物を回収できます。

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6. 固相抽出

固相抽出とは、成分の固相への吸着(保持)と脱着を利用し、混合サンプルから目的物質を選択的に精製、濃縮を行う方法です。
主として固相(充填剤)を充填したカートリッジカラムを利用します。また、夾雑物をカートリッジに吸着させて、目的物質のみを溶出させる方法もあります。

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