サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)用移動相Arg-SEC Mobile Phase シリーズ
水系サイズ排除クロマトグラフィー(水系 SEC)では、抗体の会合凝集体や疎水性の高いタンパク質、ペプチドがカラムに非特異的に吸着し、回収率が低くなることが問題になっています。Arg-SEC Mobile Phase シリーズは、アルギニン*などを添加することによって、カラムへの非特異的な吸着を抑制する水系 SEC 用の移動相です。
*アルギニンには、タンパク質と担体との分子間相互作用を弱める能力やタンパク質の溶解力を高める能力があります。
※本製品は味の素株式会社の特許の使用許諾を得て製造しています。(特許第 4941882 号)
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特長
- 吸着しやすい疎水性のタンパク質、ペプチドの回収率が向上
- 抗体の会合凝集体、抗体薬剤複合体(ADC)、サイトカインにおいて効果を発揮
- 品質管理(定量)や精製に最適
- エンドトキシン試験済
Arg-SEC Mobile Phase シリーズを使用するメリット
- タンパク質の定量分析(特に吸着しやすい成分)の精度が向上します。
- 各種の市販カラムで効果が見られます。
- 吸着が抑制されることによりカラムのロット間差の低減、耐久性の向上が期待できます。
- カラムのコンディショニングを低減します。
- 担体との相互作用を抑制するため分離が改善することがあります。
- 吸着することなく精製できるため収量が増加します。
ラインアップ
Arg-SEC Mobile Phase シリーズには、用途に応じた 3 種類の製品があります。
製品名 | 用途 | 用途例 |
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Arg-SEC Mobile Phase(Standard) | ファーストチョイス、タンパク質全般の溶離に | IgG の定量 |
Arg-SEC Mobile Phase(Strong) | より疎水性が高くカラムから溶出しにくいタンパク質の溶離に | TGF-β3 の精製 |
Arg-SEC Mobile Phase(Mild) | サブユニットに分解しやすいタンパク質の溶離に | ヘモグロビンの分析 |
それぞれ最適な濃度に調製された ready to use タイプです(0.22 µm フィルターでろ過済み)。
各溶液の pH は 6.8 です。3 種類ともアルギニンを含有しています。
抗体会合凝集体の含量比較
分析条件 | |||
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カラム | TSKgel G3000SWXL | 温 度 | 室温 |
カラムサイズ | 7.8 mm I.D. × 300 mm | 検 出 | UV 280 nm |
移動相 | ** | サンプル | hIgG4 会合凝集体 |
流 速 | 0.8 mL/min | 注入量 | 10 µL |
TSKgel® は東ソ-株式会社の登録商標です。 デ-タご提供:味の素株式会社様 |
比較 1 と同じサンプルで評価しています。Mild タイプでも強い吸着抑制効果があります。
粗 TGF-β3 の精製
分析条件 | |||
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カラム | Superdex75 10/300 GL | 温 度 | 室温 |
カラムサイズ | 10 mm I.D. × 300 mm | 検 出 | UV 280 nm |
移動相 | ** | サンプル | 粗 TGF-β3 |
流 速 | 0.8 mL/min | 注入量 | 10 µL |
デ-タご提供:味の素株式会社様 |
TGF-β3 のように極めて吸着性の高いタンパク質の精製において、Mild タイプや Standard タイプでは回収量が少なくなりましたが、Strong タイプでは回収量が劇的に増加しました。
比較 1:塩化ナトリウムを含有したりん酸緩衝液との比較
サイズ排除クロマトグラフィーにおいて、Arg-SEC Mobile Phase(Standard)と汎用的に使用されている塩化ナトリウムを含有したりん酸緩衝液との比較を行いました。モノマー(メインピーク)のピーク面積は両者で差はありませんでしたが、会合凝集体(水色部分)のピーク面積は大きく異なりました。Arg-SEC Mobile Phase(Standard)では、抗体の会合凝集体の吸着が抑制されたため、会合凝集体の含量が増加しています。
分析条件 | |||
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カラム | TSKgel G3000SWXL | 温 度 | 室温 |
カラムサイズ | 7.8 mm I.D. × 300 mm | 検 出 | UV 280 nm |
移動相 | ** | サンプル | hIgG4 会合凝集体 |
流 速 | 0.8 mL/min | 注入量 | 10 µL |
TSKgel® は東ソ-株式会社の登録商標です。 デ-タご提供:味の素株式会社様 |
比較 2:各種カラムでの抗体会合凝集体の含量比較
塩化ナトリウムを含有したりん酸緩衝液では、市販されている各種カラムでの抗体会合凝集体の非特異的吸着を抑制することはできませんでした。一方、Arg-SEC Mobile Phase(Standard)では、評価した全てのカラムにおいて吸着抑制効果が得られました。吸着が抑制されることから、カラムのロット間差の低減や耐久性の向上も期待できます。
注)カラム間で使用したサンプルは異なります。
A カラム
分析条件 | |||
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カラム | TSKgel G3000SWXL | 温 度 | 室温 |
カラムサイズ | 7.8 mm I.D. × 300 mm | 検 出 | UV 280 nm |
移動相 | ** | サンプル | mIgG1 会合凝集体 |
流 速 | 0.8 mL/min | 注入量 | 10 µL |
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B カラム
分析条件 | |||
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カラム | AdvanceBIO SEC 300 Å , 2.7 µm | 温 度 | 室温 |
カラムサイズ | 7.8 mm I.D. × 300 mm | 検 出 | UV 280 nm |
移動相 | ** | サンプル | mIgG1 会合凝集体 |
流 速 | 0.8 mL/min | 注入量 | 10 µL |
デ-タご提供:味の素株式会社様 |
C カラム
分析条件 | |||
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カラム | COSMOSIL 5Diol-300-II | 温 度 | 30℃ |
カラムサイズ | 7.5 mm I.D. × 300 mm | 検 出 | UV 280 nm |
移動相 | ** | サンプル | mIgG1 会合凝集体 |
流 速 | 0.8 mL/min | 注入量 | 10 µL |
使用例:微量な会合凝集体を含む試料での使用例
微量な会合凝集体も定量可能です。
抗体会合凝集体の含量比較-1
分析条件 | |||
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カラム | TSKgel G3000SWXL | 温 度 | 室温 |
カラムサイズ | 7.8 mm I.D. × 300 mm | 検 出 | UV 280 nm |
移動相 | ** | サンプル | hIgG4 モノマー |
流 速 | 0.8 mL/min | 注入量 | 10 µL |
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抗体会合凝集体の含量比較-2
分析条件 | |||
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カラム | Superdex200 Increase | 温 度 | 室温 |
カラムサイズ | 10 mm I.D. × 300 mm | 検 出 | UV 280 nm |
移動相 | ** | サンプル | mIgG1(15 µg) |
流 速 | 0.8 mL/min | ||
デ-タご提供:味の素株式会社様 |
研究者の使用例など
使用上の注意
推奨の検出波長は、UV 280 nm あるいは UV 225 nm です。アルギニンは低波長に UV 吸収があるため、一般的に使用される 220 nm ではベースラインが上昇する恐れがあります。