この度、弊社製品のコスモシール PBr カラムを用いた、食肉中のイミダゾールジペプチド（IDPs）の分析手法についての論文が「Journal of Chromatography B」に掲載されました。本研究は京都大学大学院 農学研究科 友永 省三 助教との共同研究成果です。

論文名：
Rapid separation and quantification of imidazole dipeptides in meats using a PBr column packed with 3-(pentabromobenzyloxy)propyl group modified silica gel

著者名：
Ozaki Makoto¹, Nakade Tomomi¹, Yamada Yasunari¹, Hirose Tsunehisa¹, Shimotsuma Motoshi¹, Tomonaga Shozo²

所属：
¹ ナカライテスク株式会社
² 京都大学大学院 農学研究科 応用生物科学専攻 動物栄養科学分野

誌名：
Journal of Chromatography B. 2025;1262:124660.
DOI : https://doi.org/10.1016/j.jchromb.2025.124660

概要：
本論文では、弊社のコスモシール PBr カラムを用いて、動物種の異なるさまざまな食肉中に含まれる IDPs をラベル化（誘導体化）処理せずに、液体クロマトグラフィー・質量分析計（LC-MS）により、10 分以内に迅速に分離・定量する手法を示しました（Fig. 1）。

Fig. 1 本研究の概要図

PBr カラムを使用することで、C₁₈ カラムでは分離することが難しい 4 種類の IDPs（カルノシン : Car、アンセリン : Ans、バレニン : Bal、ホモカルノシン : Hom）を分離度（Rs）< 1.5 で分離することができました（Fig. 2）。

Fig. 2 コスモシール 3PBr カラム（3.0 mm I.D. × 150 mm）を用いて分析した IDPs と内部標準 Gly-Leu のクロマトグラム（検出波長 220 nm）

内部標準にグリシル-L-ロイシン（Gly-Leu）を用いて、さまざまな食肉中の IDPs をシングル四重極型の LC-MS により定量したところ、動物種によって含有している IDPs の種類および含有量に顕著な差がありました。Car は馬ヒレ肉（550.0 ± 42.3 mg/100 g）と豚ヒレ肉（378.8 ± 20.0 mg/100 g）、Ans はカンガルーヒレ肉（986.3 ± 37.7 mg/100 g）と鶏ムネ肉（843.6 ± 46.1 mg/100 g）、Bal は鹿ヒレ肉（112.5 ± 7.9 mg/100 g）に多いことが示されました（Fig. 3a）。IDPs 総含有量は、カンガルー肉（ヒレ肉）> 鶏肉 > 馬肉 > 鹿肉 > マトン肉 > ラム肉 > 豚肉 > カンガルー肉（モモ肉）> 牛肉の順に高いことが示されました（Fig. 3b）。全ての食肉サンプルにおいて、IDPs は相対標準偏差（RSD）< 15% で精度よく分析できました。また鶏ムネ肉を用いて、各 IDPs の日内再現精度（併行精度）および日間再現精度を評価したところ、いずれも RSD < 15% で精度良く分析できました。

Fig. 3（a）動物種の異なる食肉中の個々の IDPs（Car, Ans, Bal）含有量、（b）動物種の異なる食肉中の IDPs の総含有量

▼ 本論文で使用した製品

• コスモシール 3PBr パックドカラム（3.0 mm I.D. × 150 mm）（e-nacalai へ）
• L-カルノシン 1 g（e-nacalai へ）
• L-アンセリン 25 mg（e-Nacalai へ）
• L-バレニン 25 mg（e-Nacalai へ）

▼ 関連資料

• COSMOSIL PBr カラムでの、食肉中のイミダゾールジペプチドとその構成アミノ酸、タウリンの一斉分析
• C₁₈ カラムでは分離困難な食肉に含まれる高親水性のイミダゾールジペプチドの高速分析

▼ 関連文献

• ラベル化剤 L-FDVDA と PBr カラムを用いた食肉中の IDPs と構成アミノ酸、タウリンの一斉分析
  Ozaki M, Nakade T, Sekiguchi M, Shimotsuma M, Hirose T, Kawase T, Tsuji A, Kuranaga T, Kakeya H, Tomonaga S. Simultaneous Analysis of Imidazole Dipeptides, Constituent Amino Acids, and Taurine in Meats Using the Highly Sensitive Labeling Reagent L-FDVDA and PBr Column, Journal of Agricultural and Food Chemistry. 2024 Nov 26; 72(49), 27538-27548.
  DOI : https://doi.org/10.1021/acs.jafc.4c07391 ※ Featured on Supplementary Cover
  
  
• PBr カラムを用いた高親水性ニコチンアミド代謝物の一斉分析
  Ozaki M, Shimotsuma M, Hirose T. Separation of Nicotinamide Metabolites Using a PBr Column Packed with Pentabromobenzyl Group Modified Silica Gel, Analytical Biochemistry. 2022 Oct 15; 655, 114837.
  DOI : https://doi.org/10.1016/j.ab.2022.114837