細胞保存液 Cell Reservoir One(ガラス化法用)
ご好評いただいている Cell Reservoir One は、優れた細胞凍結保護作用を有するマユ由来タンパク質のセリシンを主成分とした細胞保存液です。ガラス化法用の Cell Reservoir One は保存液を添加後、液体窒素に投入するまでの時間が従来の 15 秒から 60 秒まで延長可能な操作性に大変優れた製品です。本製品は、ヒト iPS 細胞やサル ES 細胞などの霊長類幹細胞の保存において、良好な結果が示されています。
※本製品は、セーレン株式会社との共同推進のもと製造しています。(特許第 6333513 号)
- 凍結までの操作時間 60 秒でも高い生存率
- 毒物としての管理不要
- DMSO、アセトアミド不含で低細胞毒性
使用方法
保存時
- 細胞を剥離液(0.25% トリプシン / コラゲナーゼ IV 溶液など)によって剥離し、なるべくコロニーを崩さないように回収します。
- 回収した細胞を遠心し、上清を可能な限り除去します。
- 本製品を 200 μL 加え、コロニーを崩さないよう注意しながら 4 ~ 5 回ピペッティングし、凍結保存用チューブに移してしっかりと蓋をします。
- ピンセットでチューブを挟み、チューブの口が液体窒素の液面に浸からないところまで沈めて 10 秒、その後完全に沈めて凍結させます。(※操作 3、4 をおおよそ 60 秒以内に行ってください。)
- 液体窒素に浸したまま液体窒素タンクの近くまで運び、素早く移して保存します。
解凍時
- 遠沈管に 37℃ に温めた培地を分注します。
- 液体窒素タンク内から凍結細胞保存チューブを取り出し、小分けした液体窒素に沈めてクリーンベンチの近くまで運びます。
- チューブを液体窒素から取り出し、素早くクリーンベンチ内で蓋を開け、一度逆さにして内部の液体窒素を捨てます。
- 温めた培地を凍結保存用チューブに適量添加し、底部に吹き付けるようにピペッティングし、素早く解凍します。
- 懸濁液を 1. の遠沈管に回収します。
- 培地で凍結保存用チューブを洗って 5. の遠沈管に回収します。
- 遠沈管を遠心した後、上清を可能な限り除去して、培地に懸濁し播種します。
※詳細は取扱説明書を参照ください。
注意事項
- ご使用に際しては、目的の細胞で事前に試用試験を実施してください。
- 本製品は、ガラス化法用の細胞凍結保存液です。緩慢凍結法には使用しないでください。
- 弊社は本製品の使用に起因する事故や損害についての責任を負いかねますので、ご了承ください。
顧客使用例
実施例 1
ヒト iPS 細胞(201B7 株*)での生存率の比較
*Takahashi K, et al. Cell. 2007;131(5):861-872.
凍結操作時間 60 秒
本製品、DAP213 それぞれを用いて液体窒素中で 2 週間以上凍結保存し、細胞を起こしてから 4 日目にアルカリホスファターゼを用いて各保存液の性能を確認しました。DAP213 ではほぼ全滅しましたが、本製品では非常に良好な生存率を示しました。
凍結操作時間 15 秒
本製品、DAP213、A 社製品それぞれを用いて液体窒素中で 2 週間以上凍結保存し、細胞を起こしてから 4 日目にアルカリホスファターゼを用いて各保存液の性能を確認しました。本製品は DAP213 と同等以上の結果が得られました。
結果
凍結操作時間 15 秒、60 秒共に同等以上の結果が得られました。特に凍結操作時間 60 秒の場合、従来法の DAP213 と比較し、細胞の生存率に劇的な差が確認されました。以上の結果から、本製品は iPS 細胞の操作に熟練された方から、未経験者の方まで、安定した結果が得られます。
使用した保存液 | コロニー数 | |||
---|---|---|---|---|
ガラス化法 | 緩慢凍結法 | |||
60 秒 | 15 秒 | |||
A | 本製品 | 672 | 563 | - |
B | DAP213 | 37 | 479 | - |
C | A 社製品 | - | - | 172 |
実施例 2
ヒト iPS 細胞(253G1 株*)でのガラス化後生着率の比較
*Nakagawa M, et al. Nature Biotechnology. 2008;26(1):101-106.
本製品は、ヒト iPS 細胞の生着率について、DAP213 と同等以上の性能を示しました。特にガラス化までの操作時間による生着率の低下が起こりません。
*生着率(%)=100 ×(ガラス化・融解後の生着コロニー数)/(通常継代時の生着コロニー数)
実施例 3
ヒト iPS 細胞(253G1 株)での既存製品との生着率の比較
各社の保存液を使用し、凍結操作時間 15 秒でヒト iPS 細胞を凍結し、解凍後 4 日目に生着率を算出しました。その結果、本製品はほかの保存液よりも生着率に優れています。
*生着率(%)=100 ×(ガラス化・融解後の生着コロニー数)/(通常継代時の生着コロニー数)
実施例 4
ヒト iPS 細胞(253G1 株)での生着率の比較と未分化能の確認
本製品は DAP213 と比較して、生着率が高く、操作時間による影響の少ないことを示しています。また、未分化マーカー遺伝子の発現も確認しています。
生着率
*生着率(%)=100 ×(ガラス化・融解後の生着コロニー数)/(通常継代時の生着コロニー数)
アルカリホスファターゼ活性
A :未凍結
B :FBS / 10% DMSO(緩慢法で凍結)
C :DAP213(ガラス化法,操作時間:15 秒)
D :本製品(ガラス化法,操作時間:15 秒)