ナカライテスク株式会社

クロマトグラフィー

COSMOSIL 2.5HILIC

LC-MS/MS によるトリアゾール型固定相を用いた光学活性アミノ酸の一斉分離定量法の開発と応用

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本データは東邦大学薬学部 薬品分析学教室 教授 福島 健 様 / 坂本 達弥 様よりご提供いただきました。

コスモシール 2.5HILIC は、トリアゾール基を有する HILIC カラムです。今回、本カラムを用いた LC-MS/MS による光学活性アミノ酸の分析データをご提供いただきましたので紹介します。

(1)光学活性アミノ酸の誘導体化試薬の合成

ヒトを含む哺乳類体内には、L 型アミノ酸のほかに微量の D 型アミノ酸の存在が知られるようになりました。D-セリンや D-アスパラギン酸のように、既にその機能解析が盛んに進められている D 型アミノ酸もありますが、それらの詳細な機能解明には、生理活性評価とともに生体濃度変動を把握できる定量分析法が必要です。 本研究では、LC-MS/MS による光学活性アミノ酸の分離定量法開発を目的として、以下の 3 条件を満たす新規のジアステレオマー誘導体化試薬 COXA-OSu の合成を行いました。

i) 光学活性部位の識別に有利と考えられる環構造をもつ
ii) 誘導体化試薬の安定同位体標識体の合成が容易
iii) 光学活性原料から合成可能

● COXA-OSu の合成

原料として、重水素標識体、非標識体ともに入手性のよい光学活性化合物である Asp 誘導体を出発物質とし、以下の通り合成しました。同様に IS として用いる COXA-d5-OSu も Asp-d3 を原料として、同等の工程で合成しました。

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(a) (CH2O)n, pTsOH, toluene, reflux, 85%  (b) HOSu, EDC-HCl, CH3CN, r.t., 54%  (c) CbzCl, K2CO3, H2O, 0℃ → r.t., 95%

● (S)-COXA-D, L-アミノ酸の誘導体化

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D, L-アミノ酸を COXA-OSu で誘導体化すると、アミノ基が誘導体化されたジアステレオマー誘導体が得られました。また、アミノ基以外にも、メルカプト基、フェノールヒドロキシ基の誘導体化が可能でした。

(2)COSMOSIL HILIC による(S)-COXA-D, L-アミノ酸(ジアステレオマー誘導体)の分析

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Conditions
Column COSMOSIL 2.5HILIC 2.0 mm I.D. × 150 mm Flow rate 0.4 mL/min (0 → 20, 56 → 60 min), 0.6 mL/min (20 → 32 min), and 0.9 mL/min (32 → 56 min)
Mobile phase A : 10 mM HCO2NH4 in 5 : 1 : 95 (v/v/v) H2O / CH3OH / CH3CN
B : 10 mM HCO2NH4 and 10 mM HCO2H in 5 : 1 : 95 (v/v/v) H2O / CH3OH / CH3CN
B conc. 0% (0 → 15 min), 0 → 100% (15 → 20 min), 100% (20 → 53 min), 0% (53.01 → 60 min)
Temperature 60℃
Detection UV 254 nm
Sample (S)-COXA-D, L-Amino Acid
Inj. vol. 5.0 µL

コスモシール HILIC を用いて、a)は誘導体化試薬のみを、b)は誘導体化試薬および誘導体である COXA-アミノ酸を分析した結果です。 a)と b)を比較すると、過剰に加えている誘導体試薬は、保持が弱く、V0 付近に溶出されましたが、誘導体である COXA-アミノ酸が保持される特徴が見られました。

● (S)-COXA-OSu を用いた D, L-アミノ酸(標準試料)の分析

TN23-p2-1-2.png
Conditions
Column COSMOSIL 2.5HILIC 2.0 mm I.D. × 150 mm Flow rate 0.4 mL/min (0 → 20, 56 → 60 min), 0.6 mL/min (20 → 32 min), and 0.9 mL/min (32 → 56 min)
Mobile phase A : 10 mM HCO2NH4 in 5 : 1 : 95 (v/v/v) H2O / CH3OH / CH3CN
B : 10 mM HCO2NH4 and 10 mM HCO2H in 5 : 1 : 95 (v/v/v) H2O / CH3OH / CH3CN
B conc. 0% (0 → 15 min), 0 → 100% (15 → 20 min), 100% (20 → 53 min), 0% (53.01 → 60 min)
Temperature 60℃
Detection ESI-MS/MS, Negative, MRM
Sample (S)-COXA-D, L-Amino Acid
Inj. vol. 5.0 µL

(S)-COXA-OSu を用いた D, L-アミノ酸の分離では、タンパク構成アミノ酸の DL 体 37 種(36 種+Gly)、その他のアミノ酸類 6 種、計 43 種の D, L-アミノ酸の一斉光学分割が達成できました。

● ラット血漿中 D, L-アミノ酸の分析

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Conditions
Column COSMOSIL 2.5HILIC 2.0 mm I.D. × 150 mm Flow rate 0.4 mL/min (0 → 20, 56 → 60 min), 0.6 mL/min (20 → 32 min), and 0.9 mL/min (32 → 56 min)
Mobile phase A : 10 mM HCO2NH4 in 5 : 1 : 95 (v/v/v) H2O / CH3OH / CH3CN
B : 10 mM HCO2NH4 and 10 mM HCO2H in 5 : 1 : 95 (v/v/v) H2O / CH3OH / CH3CN
B conc. 0% (0 → 15 min), 0 → 100% (15 → 20 min), 100% (20 → 53 min), 0% (53.01 → 60 min)
Temperature 60℃
Detection ESI-MS/MS, Negative, MRM
Sample (S)-COXA-D, L-Amino Acid
Inj. vol. 5.0 µL

ラット血漿に由来するアミノ酸においても、ラット血漿に含まれる複数の L-アミノ酸や D-Ala、D-Ser を一斉に検出することができました。

(3)考察

LC-MS/MS によるコスモシール 2.5HILIC を用いた COXA-DL-アミノ酸の光学分割について検討した結果、本研究の対象としていた COXA-DL-Ser の光学異性体がよく分離され、ラット血漿中 D-Ser や D-Ala の定量が可能でありました。本研究では、トリアゾールで化学修飾された固定相を用いて、N-誘導体化アミノ酸の光学分割を初めて示すことができました。現在は、本法を用いてマウス血清およびアメフラシ中枢組織への応用研究を行っています。

参考文献

  • Succinimidyl (3-[(Benzyloxy)carbonyl]-5-oxo-1,3-oxazolidin-4-yl)acetate on a triazole-bonded phase for the separation of DL-amino-acid enantiomers and the mass-spectrometric determination of chiral amino acids in rat plasma.
    Sakamoto T, Furukawa S, Nishizawa T, Fukuda M, Sasaki M, Onozato M, Uekusa S, Ichiba H, Fukushima T. J Chromatogr A. 2019;1585:131-137.

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