製品情報

Tocris Bioscience 社 幹細胞研究用低分子化合物(RUO / AM / GMP グレード)

幹細胞は、研究および疾病治療のための細胞や組織の無限の供給源となる可能性を秘めています。このため、幹細胞を目的の細胞に効率的に変換する分化パラダイムの早期開発が不可欠です。ここでは「幹細胞研究のための低分子化合物」をテーマに、この分野における Tocris Bioscience 社(以下 Tocris 社)の低分子化合物のラインアップと、有用性の高さについて説明します。

Tocris 社の製品群は、ドーパミン神経細胞の培養、また hPSC 由来の神経細胞の作製などに使用されることから、特に神経科学の分野においては基礎研究のみならず、再生医療への応用に向けたアプローチが期待されています。

幹細胞研究における Tocris 社低分子化合物製品の強み

幹細胞研究では、シグナル伝達経路の抑制や、分化促進のために刺激を加えるなど、その作用を任意に調節することが必須です。低分子化合物は培地交換によって簡単に洗い流すことができるため、任意のタイミングでシグナル伝達経路を調節することに大きく寄与します。また、Tocris 社の製品は全て、ISO 9001 : 2015 準拠の製造拠点にて化学合成されているため、夾雑物が非常に少なく、高純度です。加えて、バッチ間のばらつきも非常に少なく、いずれも高い活性を有します。そのため、長期間にわたる研究においても安心して使用することができます。更に、臨床に移行する際のスケールアップなど、製造規模を柔軟に調整できるため、お客さまの計画に沿った提供が可能です。

製品のグレード

Tocris 社の低分子化合物には、Standard Catalog(RUO)/ Ancillary Material(AM)/ Good Manufacturing Practice(GMP)の 3 つのグレードがあります。

RUO グレード

製品の大部分を占める RUO グレードは、種類が豊富なことに加え、ほか 2 つのグレードの製品よりも比較的安価、かつ短納期で提供できることが特長です。
RUO グレード製品の内、幹細胞研究に関連した化合物は、その作用によって以下の 4 種類に分類されます。

  • 幹細胞の分化(101 製品)
  • 幹細胞のリプログラミング(37 製品)
  • オルガノイドの構築(23 製品)
  • 形質導入の促進(17 製品)

その一方で、開発プロセスが臨床に近づけば近づくほど、代替として適切に使用可能な試薬は少なくなります。そのため、プロセスの初期段階で最高品質の試薬を正しく選択することが不可欠です。
一般に、細胞治療や遺伝子治療の品質は原材料の品質と安全性に依存するため、使用する試薬に関しては製造元、純度、同一性、安全性、適合性が正確に評価されている必要があります。したがって開発段階では、試薬の原材料が適切なものであり、かつ最終的な細胞治療製品の安全性を損なわないことを確認するため、医薬品規制当局から大規模な適格性調査を要求される場合があります。
Tocris 社では、細胞・遺伝子治療メーカーと協力し、GMP および AM グレードの 2 種類の高品質な低分子化合物を開発しました。これら 2 グレードの製品は、再生医療や免疫細胞治療、遺伝子治療に関連する用途での使用が想定されており、RUO と比較して、より高いレベルの品質管理がなされた条件下で、製造されています。

AM グレード

AM グレード化合物の製造は、ISO/TS 20399 ガイドラインに準拠しています。合成のベースとなる部分は、RUO グレードの同一化合物と同等ですが、より厳格な品質管理に基づいた品質保証レビューを行っている点が RUO グレードとの最大の違いです。具体例を以下に示します。

  • 出発原料のトレーサビリティ
  • 製造工程において動物由来原料を使用しない(TSE / BSE リスクを含んでいない旨の証明書の提供)
  • 製造エリアの分離と厳格な洗浄手順によるクロスコンタミネーションリスクの最小化
  • ISO クラス 7 準拠のクリーンルームで、無菌技術を用いた最終製品の秤量
  • 最終製品のバイオバーデン試験、エンドトキシン検査などの品質管理強化

GMP グレード

一方、GMP グレードの化合物は、cGMP ガイドラインに準拠しています。上記の AM グレードでの品質管理に加え、GMP グレードでは以下を満たしており、Tocris 社の低分子化合物の中で最高の品質を誇ります。

  • 製造工程は、ICH Q7 ガイドラインの関連するセクション(Good Manufacturing Practice Guide for Active Pharmaceutical Ingredients)に従っている
  • 合成経路の各工程で詳細にリスク評価がなされ、さらなる分析が課される
  • 米国薬局方ガイドライン USP <1043> において、Tier 2 リスク(Ancillary Materials for Cell, Gene and Tissue-Engineered Products)に分類されている

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図 1 Tocris 社製品のグレード間における製造時間の違い

縦軸は製造に要する時間を表し、品質の高さに伴って製造までに長時間を要します。

代表的な GMP / AM グレード製品と、幹細胞研究における役割

現時点で Tocris 社から発売されている、GMP / AM グレードの製品とそのターゲット、ならびにその幹細胞研究における役割を下表に示します。

GMP グレード

化合物名メーカー製品番号ターゲット幹細胞研究における役割
CHIR 99021 TB4423-GMP/10 GSK-3  リプログラミング、分化、増殖
LDN 193189 TB6053-GMP ALK2/3 分化(一般には dual-SMAD inhibition として SB 431542 との併用が勧められる)
SB 431542 TB1614-GMP/10 TGF-β RI リプログラミング、分化(一般には dual-SMAD inhibition として LDN 193189 との併用が勧められる)
XAV 939 TB3748-GMP/10 Tankyrase 分化
Y-27632 TB1254-GMP/10 ROCK 増殖、自己複製

AM グレード

化合物名メーカー製品番号ターゲット幹細胞研究における役割
A 83-01 TB2939-RMU TGF-β signaling  分化
ISX 9 TB4439-RMU Intracellular calcium signaling 分化
Staurosporine TB1285-RMU Non-selective protein kinase リプログラミング、分化
RepSox TB3742-RMU/10 TGF-β signaling  リプログラミング、分化
WIKI4 TB4855-RMU/10 Tankyrase 分化

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図 2 Tocris 社の低分子化合物を用いた、hiPSCs から皮質ニューロンやドーパミンニューロンへの分化

 

ラインアップはさらに拡充予定です。詳細は Tocris 社 Web site を参照ください。
また、その他にも幹細胞研究に関連した有用な情報を掲載しています。ぜひ、下記も併せて参照ください。

※掲載内容は予告なく変更になる場合があります。