この度、弊社製品の高感度ラベル化剤 L-FDVDA とコスモシール PBr カラムを用いた、食肉中のイミダゾールジペプチドとその構成アミノ酸、栄養成分であるタウリンの一斉分析手法についての論文が、米国化学会発行の「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に掲載されました。本研究は株式会社 栄養・病理学研究所 川瀬 貴博 氏、名古屋女子大学 健康科学部 辻 愛 講師、京都大学大学院 薬学研究科 掛谷 秀昭 教授、京都大学大学院 農学研究科 友永 省三 助教らとの共同研究成果です。
論文名:
Simultaneous Analysis of Imidazole Dipeptides, Constituent Amino Acids, and Taurine in Meats Using the Highly Sensitive Labeling Reagent L-FDVDA and PBr Column
著者名:
Ozaki Makoto1, Nakade Tomomi1, Sekiguchi Mayu2, Shimotsuma Motoshi1, Hirose Tsunehisa1, Kawase Takahiro3, Tsuji Ai4, Kuranaga Takefumi5, Kakeya Hideaki5, Tomonaga Shozo2
所属:
1 ナカライテスク株式会社 研究開発部
2 京都大学大学院 農学研究科 応用生物科学専攻 動物栄養科学分野
3 株式会社 栄養・病理学研究所
4 名古屋女子大学 健康科学部 健康栄養学科
5 京都大学大学院 薬学研究科 創発医薬科学専攻 システムケモセラピー・制御分子学分野
誌名:
Journal of Agricultural and Food Chemistry. in press
DOI : https://doi.org/10.1021/acs.jafc.4c07391
概要:
本論文では、弊社の高感度ラベル化剤 L-FDVDA とコスモシール PBr カラムを用いて、動物種・組織・品種の異なるさまざまな食肉中に含まれるイミダゾールジペプチド(IDPs)とその構成アミノ酸、タウリン(Tau)を液体クロマトグラフィー・質量分析計(LC-MS)により、分離・定量する手法を示しました(Fig. 1)。
Fig. 1 本研究の概要図
本手法は、既存のカラムやラベル化(誘導体化)試薬では分離することが難しい Nτ-メチル-L-ヒスチジンと Nπ-メチル-L-ヒスチジン、ヒスチジンとカルノシンのエナンチオマー(DL-HisとDL-Car)、高い抗酸化活性を有する L-2-オキソカルノシンも分離することが可能です。確立した分析条件で、L-ノルバリンを内部標準に用いて、食肉中の各成分を定量したところ、構成アミノ酸はいずれの食肉においても数十 µg ~ 数 mg /100 gであり、食肉の種類によって差は確認されませんでした。一方、IDPs は数百 ~ 数千 mg、Tau は数十 ~ 数百 mgであり、食肉によって含有量に顕著な差がありました。IDPs 含有量について、動物種で比較すると、牛肉と豚肉ではカルノシン(Car)の含有量が高く、鶏肉ではアンセリン(Ans)の含有量が高いことが示されました(Fig. 2a)。組織ではムネ肉 > ササミ > モモ肉の順に IDPs 含有量が高く(Fig. 2b)、品種ではブロイラーよりもブランド鶏の方が高いことが示されました(Fig. 2c)。Tau は動物種では牛肉 > 豚肉 > 鶏肉(Fig. 2a)、組織ではモモ肉 > ササミ > ムネ肉の順に含有量が高いことが示されましたが(Fig. 2b)、品種間では差はありませんでした(Fig. 2c)。本手法を用いることで、食肉だけでなく、IDPs 接種後の体内動態の分析への利用も期待できます。
Fig. 2 (a)動物種、(b)組織、(c)品種の異なる食肉中のイミダゾールジペプチドとタウリン含有量
▼ 本論文で使用した製品
- 1-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル-5-L-バリン-N,N-ジメチルエチレンジアミンアミド(L-FDVDA)(e-nacalai へ)
- コスモシール3PBrパックドカラム(3.0 mm I.D. × 150mm)(e-nacalai へ)
- 反応開始液(DL-アミノ酸ラベル化キット構成品)(e-nacalai へ)
- 脱ラベル化溶液(側鎖用)(DL-アミノ酸ラベル化キット構成品)(e-nacalai へ)
- 反応停止液(DL-アミノ酸ラベル化キット構成品)(e-nacalai へ)
▼ 関連文献
- Ozaki M, Shimotsuma M, Kuranaga T, Kakeya H, Hirose T. Separation and Identification of Isoleucine Enantiomers and Diastereomers Using an Original Chiral Resolution Labeling Reagent, Chemical and Pharmaceutical Bulletin. 2023 Nov 1;71(11):824-831.
DOI:https://doi.org/10.1248/cpb.c23-00439 - Ozaki M, Shimotsuma M, Kuranaga T, Kakeya H, Hirose T. Simultaneous separation and identification of all structural isomers and enantiomers of aminobutyric acid using a highly sensitive chiral resolution labeling reagent, Analytical Methods. 2023 Dec 14;15(48):6648-6655.
DOI:https://doi.org/10.1039/D3AY01665J ※ Featured on Front Cover