クロマトグラフィー
水溶液中のシスプラチンと mono-chloro 体、 水和錯体、および OH-ダイマーの分析例
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本データは大阪薬科大学 循環病態治療学研究室 准教授 加藤 隆児 様よりご提供いただきました。
コスモシール πNAP は、ナフチルエチル基を有するカラムです。ナフタレン由来の固定相により、C18 カラムとは異なる分離挙動を示します。今回、πNAP を用いたシスプラチン(CDDP)とその mono-chloro 体、水和錯体、および OH-ダイマーの分析データをご提供いただきましたので紹介します。
(1)実験概要
シスプラチン(CDDP)は水溶液中では mono-chloro 体、水和錯体、および OH-ダイマーの形で存在し、平衡状態を形成していると考えられています(図 1)。今回、水溶液中の CDDP とその mono-chloro 体、水和錯体、および OH-ダイマーの分離定量を行いました。

図 1. シスプラチン(CDDP)水溶液中の平衡反応
CDDP は溶液内で、Cl- が外れ H2O が置換します。また、pH の影響により OH- に置換されます。さらに Cl- がもう 1 つ外れることで、2 つの水が置換されます。同様に、pH の影響で H2O 、OH-、2 つの OH- が置換した構造になりこれらが平衡状態になっています。
(2)水溶液中のシスプラチン(CDDP)とその mono-chloro 体、水和錯体、および OH-ダイマーの分離定量
● 同一条件下での C18 カラム、コスモシール Cholester と πNAP カラムとのクロマトグラム比較例
OH-ダイマー硝酸体を測定した際に、OH-ダイマーのピークより前に解離した NO3- のピークが出現します。C18 カラム、コレステリル基を有する Cholester、ナフチルエチル基を有する πNAP を用いて分析しました。C18-MS-Ⅱでは両ピークを分離することができず、Cholester では OH-ダイマーと NO3- の 2 本のピークが認められましたが、完全に分離することができませんでした。一方、πNAP カラムでは完全に分離することができました。

| Conditions | |||
|---|---|---|---|
| Column | COSMOSIL** 4.6 mm I.D. × 250 mm | Detection | UV 225 nm |
| Mobile phase | 100 mmol/L NaClO4 / Acetonitrile / 100 mmol/L HClO4 = 290 / 10 / 3 | Sample |
Cisplatin OH-dimer nitrate (2 mmol/L)
|
| Flow rate | 1.0 mL/min | ||
| Temperature | 37℃ | Inj. vol. | 20 μL |
| Data courtesy of Ryuji Kato, Ph D.,Laboratory of Cardiovascular Pharmacotherapy and Toxicology,Osaka University of Pharmaceutical Sciences | |||
● コスモシール πNAP カラムを用いた分析
下図のようなクロマトグラムとなり、ピークの分離状態は良好な結果が得られました。シスプラチン(CDDP)に関しては 0.01 ~ 4 mM の範囲で検量線は直線性を示し、日内変動および日間変動の CV 値は 5% 以内でした。

| Conditions | |||
|---|---|---|---|
| Column | COSMOSIL** 4.6 mm I.D. × 250 mm | Detection | UV 225 nm |
| Mobile phase | 100 mmol/L NaClO4 / Acetonitrile / 100 mmol/L HClO4 = 290 / 10 / 3 | Sample |
Cisplatin (5 mmol/L)
|
| Flow rate | 1.0 mL/min | ||
| Temperature | 37℃ | Inj. vol. | 20 μL |
| Data courtesy of Ryuji Kato, Ph D.,Laboratory of Cardiovascular Pharmacotherapy and Toxicology,Osaka University of Pharmaceutical Sciences | |||
(3)考察
コスモシール πNAP カラムを用いることで、HPLC 法によるシスプラチン(CDDP)とその mono-chloro 体、水和錯体、および OH- ダイマーの分離測定法が可能となりました。
参考文献
- A Novel Analytical Method of Cisplatin Using the HPLC with a Naphthylethyl Group Bonded with Silica Gel (πNAP) Column.
Kato R, et al. Biol Pharm Bull. 2017;40(3):290-296.
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