ナカライテスク株式会社

脂肪酸メチル化キット & メチル化脂肪酸精製キット

  • その他クロマトグラフィー

脂肪酸の GC 分析に必要な前処理であるメチル化を効率よく行うための手法を紹介します。従来法のように高温で反応させる必要がないため、安全で簡便に脂肪酸をメチル化することができます。

関連製品:脂肪酸分析用メチルエステル化試薬脂肪酸メチル化キット(グリセリド用)はこちら

特長
  • 試料中の全構成脂肪酸(スフィンゴ脂質を除く)をメチル化
  • 水含有サンプルを直接メチル化
  • 温和な反応温度(37℃)
  • 精密分析に最適
  • 簡便な操作

 

分析対象

  • グリセリド(トリグリセリド,ジグリセリド,モノグリセリド,レシチンなどのグリセロ脂質)
  • 遊離脂肪酸
  • ステロールエステル

※スフィンゴ脂質には適用できません。

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製品説明

反応機構

メチル化試薬 B による反応

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メチル化試薬 C による反応

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※メチル化試薬 C は、遊離脂肪酸をメチル化するだけでなく、メチル化試薬 B よりも効率は悪いですがエステル交換によるメチル化反応も進行するため、遊離脂肪酸だけを選択的にメチル化することはできません。遊離脂肪酸だけをメチル化したい場合には、グリセリドやステロールエステルなどを分液やカラムクロマトグラフィーで除いた後、キットの使用方法に従ってメチル化してください。 下記「実施例」で脂質の分画方法について紹介しています。

従来法との比較

酵母細胞試料に対して、脂肪酸メチル化キット(#06482-04)と従来法とでメチル化を行った結果を比較しました。両者のメチル化率は脂肪酸の鎖長に関わらずほぼ同一となっています。従来法では試料を高温に加熱する必要があるため、多価不飽和脂肪酸やシクロプロパン脂肪酸などの不安定な脂肪酸の分解、低級脂肪酸アルキルエステルの蒸散消失などにより定量性が低下する可能性があります。

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本データは月桂冠株式会社 総合研究所 様よりご提供いただきました。

定量性

脂肪酸メチル化キット(#06482-04)を用いて 10 mg から 100 mg の酵母乾燥菌体に含まれる総脂肪酸を測定した結果、菌体量と脂肪酸量は比例関係を示し、不純物の多い試料でも正確に脂肪酸の測定ができることがわかりました。

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本データは月桂冠株式会社 総合研究所 様よりご提供いただきました。

メチル化脂肪酸精製キットについて

メチル化脂肪酸精製キット(#06483-94)は、サンプル中に含まれる高沸点物や不溶物を取り除き、GC キャピラリーカラムの劣化を防ぐために使用します。脂肪酸メチルと GC 溶出挙動が似た不純物ピークを除去する効果も期待できます。パックドカラムであれば、カラム内径が広いので使用していただく必要はないと考えられます。また、比較的きれいな試料であれば、キャピラリーカラムでもこの精製処理は必須ではありません。

使用方法

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  1. 乾燥試料を密閉できる容器に入れます。
  2. メチル化試薬 A 0.5 mL を加えます。
  3. メチル化試薬 B 0.5 mL を加えます。
  4. 容器を密閉後、37℃ で1 時間、または室温で一晩放置し、反応させます。
  5. メチル化試薬 C 0.5 mL を加えます。
  6. 容器を密閉後、37℃ で 20 分放置し、反応させます。
  7. 抽出試薬 1.0 mL を加えて、ボルテックスミキサーで混合します。
  8. 2 層に分離したら、上層を別の容器に移します。
  9. 採取した上層にイオン交換水 1.0 mL を加えて攪拌・洗浄します。
  10. 上層を別の容器に移します。
  11. キャピラリー GC をご使用の場合には、メチル化脂肪酸精製キット(#06483-94)を用いて精製(シリカゲルカートリッジを用いた精製法、自然流下)します。
  12. GC で分析します。

製品使用例

使用例 水含有サンプルの直接メチル化

通常、脂肪酸メチル化キットのご使用前に、サンプル中の水分を除く必要がありますが、少量(標準的な使用方法において、水分 25 µL 以下)であれば、問題なくメチル化できることを確認しています。面倒な抽出操作や脱水処理を行わなくても、直接サンプルをメチル化することが可能です。 ※脂質の濃度が低い場合には、濃度を高めるために抽出操作が必要です。

血漿

牛乳

実施例 メチル化脂肪酸精製キットのカートリッジを用いた脂質の分画

本データは地方独立行政法人 京都市産業技術研究所 京都バイオ計測センター 招聘研究員 市原 謙一 様よりご提供いただきました。

脂肪酸組成を変えた脂質クラスの混合物を用いて、メチル化脂肪酸精製キット(#06483-94)付属のカートリッジカラムによる分画を行いましたので紹介します。

1. サンプル

  • コレステロールエステル(CE)(16:0)
  • トリグリセリド(TG)(20:1)
  • ジグリセリド(DG)(18:1)
  • モノグリセリド(MG)(18:1)
  • 遊離脂肪酸(FFA)(17:0)
  • ホスファチジルコリン(PC)(18:0)
  • リゾホスファチジルコリン(LPC)(18:2)

2. カートリッジカラムへの吸着

  1. 上記「1. サンプル」の脂質混合物(それぞれ 0.5 mg、MG のみ 0.1 mg)約 3 mg をクロロホルム 100 μL に溶解し、トリエチルアミン 4 μL を加えました(遊離脂肪酸をトリエチルアミン塩としてシリカゲルに強く吸着させるため)。
  2. 1.の溶液を精製キット付属のカートリッジカラムのシリカゲル表面に滴下して脂質を吸着させました。(注:液が内壁に付かないようにします)
  3. カートリッジカラムを減圧デシケータに入れ、15 ~ 20 分減圧にして溶媒を除去しました。

3. 分画

カートリッジカラムに下記の順に溶媒を流して各脂質を回収しました。

  1. コレステロールエステル溶出液(前洗浄液 4.0 mL + 酢酸メチル 20 µL)
  2. トリグリセリド溶出液(前洗浄液 3.4 mL + 酢酸メチル 105 µL)
  3. ジグリセリド / モノグリセリド / ステロール溶出液(前洗浄液 2.8 mL + アセトン 0.7 mL)
  4. 遊離脂肪酸溶出液(前洗浄液 2.8 mL + アセトン 0.7 mL + 酢酸 10.5 µL)
  5. リゾ体を含むりん脂質溶出液(メタノール 6 mL)を、前半 3 mL と後半 3 mL に分画しました。 MG と DG は部分グリセリドとして、PC と LPC はりん脂質としてまとめて溶出させました。

4. GC 分析

それぞれの脂質画分を濃縮乾固して脂肪酸メチル化キット(#06482-04)を用いてメチル化反応と GC 分析を行い、各脂質クラスに分画できていることを確認しました。 (メチル化脂肪酸精製キットでの精製操作は不要)

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図. カートリッジカラムによる脂質の分画-GC による分離の確認

関連資料

価格表

製品名 規格 貯法 製品番号 容量 価格
脂肪酸メチル化キット(100 回用) SP 室温 06482-04 100 tests e-Nacalai.jpg
メチル化脂肪酸精製キット(50 回用) SP 室温 06483-94 50 tests e-Nacalai.jpg

上記製品は、月桂冠株式会社が公益財団法人 京都高度技術研究所 京都バイオ計測センター 市原先生との共同研究により特許を取得し、 ナカライテスク株式会社が許諾を得て製造販売しています。(特許第 4942380 号)

※掲載内容は予告なく変更になる場合があります。