この度、弊社製品のDL-アミノ酸ラベル化キットを用いて、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイド β(Aβ)中のアミノ酸のラセミ化・異性化を液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)で分離・識別する手法をまとめた論文が英国王立化学会の「Analyst」に採択され、HOT Articles 2023 に選出されました。
論文名:
Separation of amyloid β fragment peptides with racemised and isomerised aspartic acid residues using an original chiral resolution labeling reagent
著者名:
Makoto Ozaki1, Motoshi Shimotsuma1, Takefumi Kuranaga2, Hideaki Kakeya2, Tsunehisa Hirose1
所属:
1 ナカライテスク株式会社 研究部 分離精製研究課
2 京都大学大学院 薬学研究科 創発医薬科学専攻 システムケモセラピー・制御分子学分野
誌名:
Analyst, 2023, Advance Article
https://doi.org/10.1039/D2AN01885C
概要:
アルツハイマー病の原因物質であるアミロイド β(Aβ、全長 42 残基のペプチド)は凝集性が非常に高く、その凝集体が脳に沈着することで細胞死を引き起こし、認知機能が低下するとされています。また、Aβ 中の1、7、23 残基目のアスパラギン酸がラセミ化・異性化することにより、細胞毒性の向上や凝集速度が著しく進行するという報告があります。本論文では、キラルカラムや他の光学分割ラベル化剤では識別することが難しいAβ 中のアスパラギン酸残基のラセミ化と異性化を、弊社の DL-アミノ酸ラベル化キット(ラベル化剤: D-FDLDA)で誘導体化(ラベル化)した後、汎用的に使用されている C18 カラムを用いて LC-MS で分離・同定する手法を確立しました。本手法はアルツハイマー病の早期診断や疾患メカニズムの解明、他の疾患に関与しているタンパク質やペプチドのラセミ化・異性化の同定に利用することが期待できます。
本研究の先行論文:
Ozaki, M.; Kuwayama, T.; Hirose, T;. Shimotsuma M.; Hashimoto, A.; Kuranaga, T.; Kakeya, H. Separation and identification of the DL-forms of short-chain peptides using a new chiral resolution labeling reagent. Anal. Bioanal. Chem. 2022, 414, p. 4039-4046https://doi.org/10.1007/s00216-022-04048-w
▼ 本論文で使用した製品
DL-アミノ酸ラベル化キット(e-nacalai へ)
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DL-アミノ酸ラベル化キット