⑨ 順相HPLC分析におけるトラブル解消法
コスモシールSL-IIカラムで順相HPLCを行う場合によく起こるトラブルとその解消法についてご紹介します。
- 1. 同じHPLC装置を使用して逆相分析から順相分析、順相分析から逆相分析に切り換える場合、どうすればよいでしょうか?
使用していた移動相を新たな移動相に切り換える場合の原則は、互いに混じり合う溶媒にまず置換するというこ とです。逆相分析から順相分析、順相分析から逆相分析に切り換える場合、一旦カラムを取り外し、ポンプと検 出器を直接接続し、次のような手順で装置内の溶媒を置換します。
〈逆相分析から順相分析に切り替える場合〉
①逆相分析で緩衝液を含まない移動相を使用していた場合
- 逆相分析で使用していた溶媒
- テトラヒドロフランやエタノールなど、どちらの移動相とも混じる溶液で置換する。
- 順相分析で使用する溶媒
②逆相分析で緩衝液を含む移動相を使用していた場合
- 逆相分析で使用していた緩衝液を含む溶媒
- 塩を含まない1.と同一組成の溶媒
- テトラヒドロフランやエタノールなど、どちらの移動相とも混じる溶液で置換する。
- 順相分析で使用する溶媒
〈順相分析から逆相分析に切り替える場合〉
①逆相分析で緩衝液を含まない移動相を使用する場合
- 順相分析で使用していた溶媒
- テトラヒドロフランやエタノールなど、どちらの移動相とも混じる溶液で置換する。
- 逆相分析で使用する溶媒
②逆相分析で緩衝液を含む移動相を使用する場合
- 順相分析で使用していた溶媒
- テトラヒドロフランやエタノールなど、どちらの移動相とも混じる溶液で置換する。
- 塩を含まない4.と同一組成の溶媒
- 逆相分析で使用する緩衝液を含む溶媒
混じり合わない移動相を、直接置換しようとすると、HPLC 装置の流路系、特にポンプヘッド内部や検出器のセル内部に液滴として残ってしまい、分析時にベースが安定しない原因になります。
誤って混じりあわない移動相(水とn- ヘキサンなど) を送液してしまった場合は以下の手順で装置内の溶媒を置換します。
Step1:塩を含む移動相を使用していた場合、塩を含まない同一組成の移動相で置換する。
(塩を含まない移動相を使用している場合は必要ありません。)
Step2:テトラヒドロフランやエタノールなどどちらの移動相とも混じる溶液で置換する。
Step3:今から使用する移動相に置換してください。
- 2. ポンプの流速が安定しないのですが、どうすればいいでしょうか?
原因 ポンプヘッドのチェックバルブでの気泡の発生によりポンプが正常に作動していないことが考えられます。順相分析に用いられるn -へキサン、n -ヘプタン等の溶媒は沸点が低く気泡が発生しやすく、また粘度が低く、発生した気泡は流れ出にくくなります。 対処法 テトラヒドロフランやエタノールなどによるチェックバルブの超音波洗浄が有効です。 予防法 移動相として使用される前に十分脱気してください。
それでもポンプの流速が安定しな場合、プレカラムを接続しポンプにかかる圧力を5MPa程度まであげることによって気泡が発生しにくくなります。(高くなりすぎるとポンプ等に負担がかかります20MPa以下で行ってください。)
- 3. 同じカラム、条件なのに以前とサンプルの溶出時間が異なる、どうすればいいでしょうか?
原因1 上記Q2のようにポンプに原因があり移動相が正確に送液出来ていない可能性があります。 対処法1 上記A2にしたがって対処してください。 原因2 順相カラムは移動相およびサンプル溶媒に含まれる極性分子に非常に敏感です。
よってこれらに含まれる微量の水が溶出時間に影響を与える可能性があります。対処法2 - 移動相は水を含まない条件を選択下さい。
- 移動相に使用される溶媒は新しいものをお使いください。
- サンプル溶媒に水を含む溶媒を使用されている場合は、水を含まない溶媒に変更するか注入量を減らしてください。
※カラムに水が入ってしまった場合、エタノールで洗浄することで水を取り除くことが出来ます。
- 4. SL-IIカラムの洗浄方法について
SL-IIカラムはテトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、塩化メチレン、n -ヘキサン、n -ヘプタン等で洗浄できます。
いずれの場合もA−1のように順に混じり合う溶媒を用いて下さい。
- 5. カラムの保管方法について
密栓をしっかり締め、カラム内部の溶媒が蒸発して充填剤が乾かないようにして保管して下さい。分析時にハロゲンを含む移動相を用いられた場合はカラム内をハロゲンの含まない溶媒、たとえばn -ヘプタン等で置換して密栓をして保管して下さい。
- 6. TLCからSL-IIの移動相条件を設定することはできますか?
TLC からSL-IIの移動相条件を設定するには、まず、TLC で分析したいサンプルのRf 値がおよそ0.1〜0.2の範囲になる展開溶媒および濃度を確認します。その展開溶媒および濃度をSL-IIの移動相に適用し適当な保持(k':1 〜 5)が得られるように、濃度を微調整します。
- 7. ピークがテーリングする場合、何か対処法はありますか?
- サンプルが酸性化合物の場合、0.5%程度の酢酸を移動相に添加することにより改善される可能性があります。
- サンプルが塩基性化合物の場合、0.5%程度のトリエチルアミンを移動相に添加することにより改善される可能性があります。
- 8. ピークが出てこない場合、何か対処法はありますか?
原因1 サンプルの親水性が強く、カラムにとどまっている可能性があります。 対処法1 (サンプルが溶出してくる程度まで) 移動相の溶出力を高めてください。
例えば、溶出性の高い有機溶媒 (エタノールなど) へ変更、もしくは含有量を高めてください。原因2 サンプルが金属配位性や塩基性化合物などの場合カラムに吸着している可能性があります。 対処法2 移動相に酸 (トリフルオロ酢酸や酢酸など) を0.1%-1%程度添加してください。